29徳間晴美・田川恭識・福池秋水/初中級日本語クラスのコースデザイン期』へのつながりを考慮して800〜1200字程度とした。文法や語彙,構文等の難易度については,初中級のレベルに合わせてある程度コントロールするが,やや難易度が高いと思われるものも必要であれば残すこととした。理由は,読解教材として自然な文章であることや学習者にとって興味の持てる内容であることを優先したこと,また,初中級レベル以上の文法や語彙を類推するスキルも中級以上の日本語学習では必要であると考えたことである。その一方,目標語彙・文型を設定することもしなかった。語彙や文型を意識して書き下ろすことにより,文章としての自然さが失われるおそれがあったためである。②担当者が本文の素案を出し,検討・修正担当者がトピックを探し,素案を執筆した後,主にグループ内で文章の自然さや難易度等についてコメントし,担当者が持ち帰って再検討,再執筆することを数回繰り返した。③「読解シート」の作成本文がほぼ確定すると,総合日本語3の準備担当者が書式を整え,内容確認の質問等を加えた「読解シート」を作成した。以上のような手順の結果,5編の書き下ろし読解教材が完成した。この補助教材を使い,「読む活動」を設定した。「読む活動」は,本文を読み,内容を理解するところからクラス内ディスカッションに至るまでの4技能を駆使した総合的な活動である。3―3.活動の組み立てここまで,主教材を用いた授業の概要と主教材の不足部分を補うために行った方策について述べてきた。教科書をベースとした授業は,日本語についての知識を構造的に身につける上では有効であるが,実際の運用能力を育成するという点では足りない部分が多い。その不足を補うために,「活動」の時間を設定した。この「活動」の時間に行ったことは,テーマに一連のつながりを持たせながら,「①意見文を書こう」,「②調査をしよう」,「③レポートを書こう」という3つのステップを踏んで進める「調査・レポート活動」である。まず,「①意見文を書こう」では,学習者が身の回りの事象について感じている疑問や問題の中からテーマを絞る。そして,自分の意見をまとめて意見文の執筆を行い,その内容についてクラス内で発表する。続く「②調査をしよう」では,①の意見文で取り上げたテーマについて調査計画書を書き,周囲の日本人あるいは外国人を対象として調査(アンケートまたはインタビュー)を行い,調査結果を報告書にまとめて発表をする。最後の「③レポートを書こう」は,調査結果を受けて自分の考察を加え,レポートの執筆を行い,クラス内で発表をするというものである。以上の①から③のステップを経る中で,本活動では,抽象的な事柄について日本語でまとめる力,日本語を使ってコミュニケーションする力,日本語で発信する力をつけることを目的とした。
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