28早稲田日本語教育実践研究 第3号/2015/25―32にも影響が出る。そのため,総合日本語3で『中級へ行こう』を採用した場合,この教科書に続く『中級を学ぼう 中級前期』,『中級を学ぼう−日本語の文型と表現82 中級中期』(以下『中級を学ぼう 中級中期』スリーエーネットワーク)を総合日本語4以上でどのように扱うかが課題となった。検討の中で,まず総合日本語5,6については,2013年度春学期より主教材が変更となったばかりの時期であったこともあり,短期間での主教材変更は避けることになった。したがって,総合日本語3と総合日本語4で『中級へ行こう』『中級を学ぼう 中級前期』『中級を学ぼう 中級中期』の3冊をどのように扱うかを考える必要が生じ,メリットとデメリットを考えながら慎重に検討を進めた。その結果,前後のレベルである総合日本語2,総合日本語5とのつながりを考慮し,総合日本語3では『中級へ行こう』,総合日本語4では『中級を学ぼう 中級中期』を採用し,『中級を学ぼう 中級前期』については,総合日本語3でも総合日本語4でも扱わないことを決定した。『中級を学ぼう 中級前期』を扱わないこととした理由としては,前後のレベルとのつながりを重視したこと,受講者に教科書を2冊買わせることを避けようとしたこと,『中級を学ぼう 中級前期』の内容はコースデザインの工夫によってカバーできることが挙げられる。これに伴い,解決すべき課題として挙がったのが,「読解教材の補強」である。具体的な内容を3―2で示す。3―2.読解資料の作成3―1で述べたような検討過程を経て,総合日本語3,4の主教材が決定したが,その結果,解決すべき問題点がいくつか残された。その一つが,総合日本語3で採用した『中級へ行こう』の「本文」の短さであった。中級以降で使用される総合教科書では,各課に一定の長さの文章があり,その文章に出てくる文型,語彙,表現を学ぶ,という構成になっているものが多い。このような教科書において,本文は文型や語彙の使用例であり,話し合い活動,短作文等のトピックを提供すると共に,読解力を養成するという役割を担っている。しかし『中級へ行こう』はこの本文部分が300〜600字程度と短く,改定前と同等の読解力を身につけることができるかが大きな懸念点であった。この懸案を打開するためには,補助教材を使用した読解活動の時間を確保する必要があった。この読解補助教材としては,市販の読解テキストを採用する,一般の新聞や書籍,ブログ等から引用する,検討グループ内で書き下ろす,各授業担当者に一任する等,さまざまな案があり検討したが,学習者の経済的負担,著作権問題,クラス間の公平性等々を考慮すると,書き下ろし教材が最も問題のない形であるという結論に達した。書き下ろし教材作成は以下のような手順で行った。①検討グループ内でトピックや難易度,長さ等の大まかな方針を策定内容は,多様な学習者に対応できるよう,学習者にとって身近なトピックであると同時に,特定の学習者が不快に感じる可能性がある話題はできる限り避けることとした。また,教材を読んだ後,クラス内でのディスカッションに発展しうるような内容にすることを意識した。長さは『中級を学ぼう 中級前期』のテキストの長さや『中級を学ぼう 中級中
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