27徳間晴美・田川恭識・福池秋水/初中級日本語クラスのコースデザイン3.コースデザインの具体的な作業に焦点を当てた練習が行われることが多い。それに対して中級以降では,実際の使用場面から切り離された形での導入や,あるいは文字情報による導入が多くなる。また教科書の構成も,初級では学習項目が含まれた短い会話が課の中心であるのに対し,中級からは課ごとに設定された中〜長文の読解が中心となることが多い。一般的に中級以降では,読みの力が重要になってくることから,上記のような指導方法および指導内容の変化は当然であるものの,あまりに急激な変化は学習者にとって大きな負担になると考えられる。また,教科書以外の活動を例にとっても,中級以降では社会的,学術的なトピックについて自己の意見を表明するというような能力が求められるようになる。初級では比較的身近で日常的なトピックが扱われることが多いことから,学習者は難易度が飛躍的に上昇するように感じてしまうおそれがある。2―3.総合日本語3の教科書変更とあらたなコースデザイン以上の問題を受け,CJLでは総合日本語3のコースデザインを見直し,それに伴って主教材となる教科書を変更することとなった。教科書の選定についての詳細は次章で触れるが,コースデザインに当たっては以下の点を目標とした。・日々の授業を通し,初中級レベルにふさわしい「読む」「聞く」「書く」「話す」の能力を身につけること・教科書以外の各種活動を通して,自分の意見や社会のことについて考え,発信できる力を養成すること・一連の学習を通して,論理的に日本語を理解し,表現できるようになること以上を踏まえ,初級とのつながりを念頭においた上で中級への「基礎固めをする」ことを重視した。3―1.教科書の選定2013年秋学期まで,総合日本語3では『日本語中級J301−基礎から中級へ』(スリーエーネットワーク)を使用していたが,2―2で述べたように,初中級の段階としては難易度が高いという問題があった。また,教材で取り上げられている語やトピックが古いという問題も指摘されていた 5)。そこで,主教材となる教科書を変更することとし,主に3―4レベルのコーディネート担当者を含む検討グループを中心に選定作業を行った。主教材変更の検討作業は,2013年2月頃から行った。初中級・中級の総合教科書から検討した結果,候補は『中級へ行こう−日本語の文型と表現59』(以下,『中級へ行こう』スリーエーネットワーク),または『中級を学ぼう 中級前期』(以下,『中級を学ぼう 中級前期』スリーエーネットワーク)に絞られた。選定理由は,初級を修了したばかりの学習者に適したレベル設定であること,各課の本文がある程度関心を持てるテーマであり,古くなりにくいトピックが選ばれていること,練習問題も適当な量が設けられていること,等である。総合日本語3の教科書選定は,次レベル以降の総合日本語(4〜6)のコースデザイン
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