6は中上級から上級の学習者を対象としており,扱う文章(各課の読解教材)はより難易26早稲田日本語教育実践研究 第3号/2015/25―32一方,総合科目群と同じくCJLの日本語教育を特徴づけるものとして,テーマ科目群の授業が挙げられる 4)。テーマ科目群は総合科目群と異なり,コーディネーターが存在せず,科目担当者が独自に作成したシラバスに沿った授業が行われる。内容は,会話や読解といった特定の技能に特化したものから,学習活動をより広く捉えて展開するものまで多様である。科目担当者が離職した場合などは,次学期以降,当該科目は開講されない。テーマ科目群と総合科目群を比較すると,テーマ科目群は学習者の多様なニーズに対して幅広く対応可能な科目である一方,総合科目群は学習者数の増減が生じても一定水準の授業が提供できるという意味で,安定的な科目と言える。本報告で取り上げる総合日本語3も上記の総合科目群の枠組みに含まれるが,これまでいくつかの問題点が指摘されていた。以下では総合日本語3について,クラスの位置づけと目指すこと,および従来から指摘されていた問題点を見ていきたい。2―2.総合日本語3の位置づけおよび目指すところ現在,総合日本語科目は,総合日本語1から総合日本語6まで6つのレベルが開講されている。総合日本語1は,日本語の未習者または初級前半の学習者を対象にした授業であり,日本語の基本的な文法,語彙を学習するとともに,会話や作文についても学ぶ。総合日本語2は,初級後半の学習者を対象とした授業であり,総合日本語1に続いて日本語の基本的な文法,語彙を学ぶとともに,会話や作文,スピーチなども行う。続く総合日本語3は,初級の終わりから中級前半の学習者を対象とした授業であり,初級で学習した基本的な文法をしっかりと押さえつつ,中級に向けての基礎固めを行うことを目標とする。後でも詳しく述べるが,調査結果をまとめてレポートを書き発表するといった活動も行う。総合日本語4は,中級の学習者を対象とした授業であり,基本的な文法や語彙に加え,やや硬い文章に出てくる文型,表現についても学ぶ。また,他者との対話を通し,自分をみつめ,自己を表現できるようレポート作成も行う。総合日本語5は,総合日本語4に続いて中級後半から中上級の学習者を対象とした授業である。日本の新聞や新書の一部を抜き出した文章を読み,その中に出てくる文型や表現,語彙を学ぶ。また日本語によるレポートの書き方について体系的に学び,学習者にも数回のレポート執筆を課す。総合日本語6でも5と同じ教科書を使用しているが,総合日本語度が高い。総合日本語6でも日本の時事問題をテーマとしたレポート執筆を数回行い,ディスカッションなどを行う。以上のように総合日本語3は「初中級」レベルに位置し,中級以降の日本語能力の基盤を固める重要な学習段階と言える。しかしながら,今回のコース内容の改定以前まで学習者や担当教員間で総合日本語3の授業内容について問題が挙げられていた。そのうちの主要な問題点が,いわゆる初級から中級への「段差」である。従来,総合日本語3になるとそれまでに比べて急に内容が難しくなる,という声が学習者のみならず授業担当者からも多く寄せられていた。その背景には様々な要因があるが,その一つに,初級の総合日本語と中級の総合日本語の指導方法の違いが挙げられるのではないかと考えられる。例えば,文型の導入にしても初級の授業では一つひとつの文型の導入が丁寧になされ,文型の定着
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