18早稲田日本語教育実践研究 第3号/2015/9―245―2.インタビューからみる教師A・Bの意識実践記録を踏まえ,インタビューでは,1)日本語教育について(日本語教育歴,日本語教育を学んだ機関,ビリーフ),2)今学期行った音声指導の振り返り(自身の取り組み,学生の反応),3)総合クラスにおける音声指導についての考え方,4)日本語教師としての目標などについて半構造化インタビューの形式を用いて行った。以下に,実践記録から明らかになった,それぞれの教師の実践の特徴を述べた上で,インタビューから関連する部分を取り上げ,分析・考察を行う。5―2―1.教師Aのインタビューから教師Aは,3節で示した使用モデル通りのやり方を1,2回行った後,教師がヒントを与えず,まず学習者に考えさせて読ませるやり方に転換し,間違った発音についても,答えをすぐ提示するのではなく,ヒントを与えて学習者に考えさせるような方法をとっていることが多い。後半から学習者が自ら注意しながら発音できるようになった様子を記し,成長を実感しているようである。学期を通しての自身の音声指導を振り返り,以下のように述べている。A:もともと私,そんなに教えようって思ってないから,間違えた時も「ん?」って言って,自分で考えて正しい答えが言えれば,それでいいと思う。自分で考えて気をつける,ってことが大事だと思うから。そういうことができるようになってきたのを,見てただけっていうか。I:(じゃあ結果的にそれができるようになったと,学生のほうで。)A:私が「そうじゃないよ」って言うことで,その字をもう一回見て,考えてくれるっていうことをすることができるようになったんだったら,それはいいのかもしれないけど。I:(じゃあAさんの目的としては,学生が意識できるようになるっていうのが目的?)A:私がいなくて,自分で家で勉強してても,「なんか違うかも?」って,見直せればいいと思う。以上からA は学習者が自分で考え,意識するようになることを目標とし,指導していたことがわかる。また,授業中注意していることを聞かれ,自身の学習観に基づき,次のように述べている。A:一個でも,ああそうなんだ!って思うことがあるといいなって。私が外国語を勉強してる時のが強いんだろうね。知的好奇心を刺激されることが好きなんだよ,私は。へえー!って思いたいの。自身の外国語の学習経験から,何か新しい発見を自らする体験を授業中の学習者に求めていることがわかり,ここからも学習者自身で気づきを得られるような指導を目指してい
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