14早稲田日本語教育実践研究 第3号/2015/9―244―3.教師のアンケート結果と考察続いて,教師による教材に対する段階評価の結果を示す。表2は,アンケートに回答した教師24名のうち,「ことばシート」を使用した教師11名の教師の段階評価である。なお,春学期と秋学期の教員に重なりが多かったこと,また他の質問項目を優先させたことなどの理由から,秋学期には段階評価を行わなかった。表中の⑤の「ことばシートを使うことで学習者にとって良い影響があったか」という質問に対する値を見ると,使用した教師からは当該教材に対して一定の支持が得られたようである。また「ことばシート」の特徴としてアクセントやイントネーションといった韻律情報が付与されていることが挙げられるが,①の値から見ると,アクセント情報に対しては有用性や表示方法について一定の評価が得られたことが窺える。一方,イントネーションについては,表示方法の適切さは④に見られるように比較的高い評価であるものの,③のように役に立ったかどうかについては高い評価とは言えず,教師によって意見が分かれる所であったと推測される。その背景として,アクセントについては指導項目としてイメージしやすいが,イントネーションについては「指導方法が分からない」,「そもそも指導の必要性があるか」といった声も聞かれ,根本的な認識や価値観の問題も影響していると考えられる。以下,自由記述部分に見られた教師からのコメント(春・秋学期)を挙げるが,ここでもアクセントについてのコメントは多く見られたのに対し,イントネーションに言及したものは少ない。開発者側としては,イントネーションの指導の重要性を踏まえた上でイントネーションの情報を付与したが,実際はアクセントほど指導されていなかったのではないかと推測される。・はじめの方の課で使用したため,日本語の語には高低アクセントがあるということに学習者が気づいてくれた・アクセントを可視化できるのがいい・アクセントに気を付ける学習者はしっかり確認しながらリピートしていた・学生が発音を意識するようになった・発音を直す際にアクセントを視覚化して指導する習慣がつき,学習者もアクセントに注意するようになった・学生によっては,毎回熱心にシートを見て,アクセントに気をつけながら読み練習を行っていた4.3(1.0)4.4(0.8)3.2(1.5)3.9(1.3)4.1(0.8)表2 2012年度春学期の教師による教材の有用性に対する段階評価(標準偏差)①アクセントのしるし(赤い線)は役に立ったか②(アクセントの)表示方法は適切か③イントネーションのしるし(青い線)は役に立ったか④(イントネーションの)表示方法は適切か⑤ことばシートを使うことで学習者にとって良い影響があったか
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