7 池上摩希子/「全学的な」日本語教育を目指して5.おわりに―課題を見据えて―「Waseda vision 150」で目指されている大学の国際化とは,「早稲田」を「WASEDA」(いけがみ まきこ,早稲田大学国際学術院)と表記し,外国人留学生数を増やすだけで達成できるものではありません。以前,日本人学生と留学生が混在する授業を担当したとき,留学生からのコメントに「今まで,大学で日本人学生と日本語で議論をしたことがなかった」といったものがありました。この学生の場合,日本語力の問題で議論ができないのではありません。このコメントの意味するところに日本語教育の意義があり,CJLの「全学的な」役割があるのではないかと思います。全学共通副専攻科目「日本語教育学研究/マルチリテラシーズ」は,学部学生を対象に日本語教育学を体系的に学習しつつ,「日本語を教えるとはどのようなことなのか」を学ぶ科目です。2015年度よりCJLからグローバルエデュケーションセンターに移管しましたが,CJLの教員が授業を担当することに変わりはありません。「日本語を教えるとはどのようなことなのか」を考えられる学生を増やすことは,留学生の増加に対して効果的な対策にもなるでしょう。異文化コミュニケーション,言語,社会といった興味関心から,日本語や日本語教育への入り口として幅広い内容を提供することで,大学の国際化にひとつの貢献ができると考えています。本稿はCJLが担う事業のうち「教育活動」に関することを中心としました。他の事業,「研究活動」「広報活動」「学内外他箇所への協力」に関する言及は,別途としなければなりません。また,CJLが開講する授業は2014年度秋学期現在週659コマを数えます。それを支える185名のティーチングスタッフ,その実践,職場環境としてのCJLに関しても,述べられていません。多くの課題があることを認識し,それらをしっかりと見据えて,2015年度の,そしてその次のCJLへと進んでいきたいと思います。
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