小林ミナ/新たな一歩を踏み出す5.2014年度日本語カリキュラムの概要CJLでは,2014年度に向けて「安定性」と「先進性」を2本の柱に据えた,日本語カその際,留意するべきことは何か。一つ明らかなのは,「外国人留学生数が2.5倍になるなら,教員も教室も予算も2.5倍必要である」といったような,数の増加に数で答える処方箋では,うまく対応できないだろうということです。こんな簡単なかけ算であれば小学生でもできますし,なにより,このような処方箋からは,日本語教育の専門家集団としての知恵は見えてきません。さまざまな目的,期待,希望を抱いて本学にやってくる学生たちにとっては,留学生活における日本語,日本語学習の必要性や優先順位もさまざまです。そのような学生たちに,CJLとしてどのような日本語学習環境を整えることができるのか。新生CJLは,今まさにそれを問われています。一つめの課題が,「外国人留学生への対応」という,いわば狭義の日本語教育に関わるものであるとすれば,二つめにあげられるのは,「日本語教育学の知見,成果を,いかに全学の教育に還元するか」といった,広義の日本語教育に関わる課題です。「日本語授業は外国人留学生のためのもの」「日本人学生には日本語学習は不要」という単純な図式では語れない環境がすでに出現していることは上で述べました。しかし,日本人学生だけに目を向けたとしても,「日本語学習が必要なのは誰か」を突きつめて考えていくと,その境目はきわめて曖昧なものとなります。そして,その先には「日本語学習/日本語教育とは何か」「日本語が使えるとはどういうことか」「何のために言葉を学ぶのか」といった,「言葉」や「言葉の教育」全体に関わる大きな課題があり,そこに収斂されていくであろうことも明白です。このような大きな課題に対して,CJLに何ができるのか。これはすなわち,「外国人留学生のための」という狭義の日本語教育にとどまることなく,日本語,日本語教育の専門家集団として全学の教育カリキュラムに対して発信,提案していくということではないでしょうか。そしてこれもまた,CJLの責務であると考えます。リキュラムの整理,再編に着手しました。「安定性」というのは,今後,外国人留学生の量や質に大きな変動があったとしても,高い質をもった授業を安定して提供できる土台を意味します。日本語カリキュラムの「安定性」は,CJLが全学におけるその責任を果たす上で,きわめて重要です。「先進性」というのは,先進的,独創的でユニークな日本語授業,プログラム,カリキュラムを開発,提供していくことを意味します。これはすなわち,学内にとどまらず,広く国内外における日本語教育に向けて,CJLの活動成果を広く発信していこうという姿勢の表明でもあります。このような「安定性」と「先進性」の具体として,2014年度から「総合科目群」「テーマ科目群」という二つの科目群を設定し,それぞれの中に個々の科目を位置づけました。「総合科目群」の科目は,常勤インストラクターと非常勤インストラクターが担当します。あらかじめ策定された教材,シラバスに基づいて,日本語教育の専門家であるインストラクターが授業を担当することによって,同一レベルに複数のクラスを開講することができ,留学生数に大きな変動があっても,柔軟,かつ,安定した授業を提供することが可5
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