早稲田日本語教育実践研究 第2号
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1-19早稲田日本語教育実践研究 第2号/2014/65―792) ここでいう意識化とは,小柳・迫田(2006)で言及されているような,ある言語形式に注意を喚起させるための意識化(consciousness raising)とは異なり,コミュニケーション観を広げる,深めるという意味で用いる。3) 福島(2007)は,「意味内容上の相対的なまとまりとして区分される「話題」」(佐久間2003:91)である「話段」ごとのスピーチレベルを分析したところ,丁寧体のみ,あるいは普通体のみで成り立つ会話は見られなかった,つまりすべて混ざっている「混合体」だったと述べている。4) 会話の内容理解にかかる時間を短縮させ,スピーチレベルに意識を向けさせるためである。5) 発話の意味が場面と文脈から分かるが,言い切っていない発話 例:学ぶって感じで。好きっていうか。行きたいと思って。やだーみたいな。(田所2012)6) 「できないっすよ」「分かんないっすよ」のように「です」の代わりに「っす」をつける形で丁寧体と普通体の間の丁寧さを表す文体を川口義一氏は「っす体」と呼んでいる。(待遇コミュニケーション学会2013:173)7) 会話2リザの「会話者意識」とは,以下の箇所を指している。「(丁寧体で話したのは)初対面だから。特に女性と。男性のほうがすぐ,普通体になっちゃいますし,友達同士みたいな話し方をしてるので,私もついていかなきゃみたいのがありますけど。逆に,日本人の女性は普通体を使ってもやわらかくて,丁寧さがなくならないですね。それに負けないように,丁寧に話してる。ま,あくまで無意識ですけど。」8) 4―3の<第2回授業④話し合いの一部>の部分が影響していると思われる。参考文献ウォーカー泉(2011)『初級日本語学習者のための待遇コミュニケーション教育―スピーチスタイルに関する「気づき」を中心に―』スリーエーネットワーク蒲谷宏(2012)「待遇コミュニケーション教育の構想(Ⅱ)」『早稲田日本語教育学』11,小柳かおる・迫田久美子(2006)「第二言語習得研究と日本語指導」『講座・日本語教育学第3巻 言語学習の心理』95-125佐久間まゆみ(2003)「文章・談話における「段」の統括機能」『朝倉日本語講座⑦文章・談話』91-119佐藤慎司・ドーア根理子 編著(2008)『文化,ことば,教育:日本語/日本の教育の「標準」を越えて』明石書店ザトラウスキー・ポリー(1993)『日本語の談話の構造分析―勧誘のストラテジーの考察』日本語研究叢書5,くろしお出版塩谷奈緒子(2003)「「学習者の解放」の環境設定と活動支援―「学習者の教室からの解放」と「学習者の教室内での解放」―」『21世紀の「日本事情」』5,18–34待遇コミュニケーション学会(2013)「創設5周年記念大会(2012年度秋季大会)シンポジウム記録 待遇コミュニケーション学の可能性」『待遇コミュニケーション研究』10,164-18478

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