齋藤智美・渡部みなほ・田所直子・川名恭子・田中敦子/総合的言語活動としての「日本語かきこ」らは,教室でのFBを学習機会として捉え,書き込みを学習に利用する姿勢のひとつを見ることができる。あえて不確実な文法を用いることの裏にはFBに対する期待があると考えられるが,このように,書き込みとFBという活動を包括的に捉えることに,クラスメートとのコミュニケーションが介在することは,言語活動に重要なことではないだろうか。ある学生は「日本語かきこ」をこのように振り返っている。・「クラスでのディスカッションによって,内容を書いたり読んだりすることに,より興味が持てるようになった。はじめは強制されているように感じたが,やっていくうちに面白いことがわかった」教師から学習者への,あるいは個々の学習者からクラス全体への,一方通行ではないこと,すなわち教室でのFBが教室全体でのやりとりや共有による協働の場として機能することが,「日本語かきこ」の特長のひとつと言えるだろう。そしてまた,書き込みとFBという一連の活動を複数回にわたって継続していくことは,単に日本語使用の場を提供するというだけではなく,他者との関係性を意識することでもあった。学びの継続性という意味において,これは意義があると言えよう。以上のことから,「日本語かきこ」は,書き込み,それを読み,コメントし,質問し,内容や文型・語彙・表現全体を振り返り,それらを実文脈として捉えたコミュニケーション活動として機能する学習活動であるということがわかる。これは,4技能の枠にとらわれない総合的言語活動であると言えるのではないだろうか。このような総合的な言語表現活動を初級の早い時期から実施することが,個々の自律的な学びのリソースとして有益だと捉えられていることがアンケート調査から明らかになった。今後は,これを意識的に活かした活動をデザインすることによって,より実り多いものとなるであろう。しかしながら,この活動を「つまらなかった」と評価した学習者がいたのも事実である。この6名の評価について,以下に分析・考察する。5―2 活動を否定的に評価した学習者の背景4―2―6のアンケート結果にもあるように,活動終了後,「楽しかった」「いい練習になった」という肯定的な評価をした学習者が多かった。一方,「大変だった」「難しかった」「つまらなかった」という否定的な評価をした学習者は数名存在しており,特に「つまらなかった」という回答者は6名いた(図6)。ここでは,なぜ彼らがこの活動をそのように評価したのか,各学習者の回答をもとに,その要因を探り,活動の問題点として明らかにする。各自のアンケート回答の傾向を分析した結果,「つまらなかった」という回答は2つのタイプに分類できることがわかった。1つ目は,開始前からネガティブな印象を持ち,終了後もそれが変わらなかったタイプである。該当者は3名であったが,その中の1名は「漢字で書き込んでいる学生がいたため,読むことが出来なかった」,「漢字の使用について先生が明快な指示をする必要がある」とコメントしている。他の1名は週1回の活動を多いと感じており,クラスメートの書き込みも「全く読んでいなかった」と回答している。その一方で,3人目は「つまらなかった」と回答した学習者の中で唯一「簡単そう」だと思っ61
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