4―2―6)。そして,活動全体を振り返った中でも特に,FBについての自由記述回答からは,(1)4技能の向上の実感齋藤智美・渡部みなほ・田所直子・川名恭子・田中敦子/総合的言語活動としての「日本語かきこ」5.考察・「他の学習者から学ぶことが出来る」という記述に見られるように,「日本語かきこ」の特徴であるオンラインと教室での活動をブレンドし,かつ個別型学習ではなくクラスという単位で学ぶ利点が,学習者自身に実感されていることも明らかになった。本章では,アンケート結果について肯定的評価,否定的評価のそれぞれの背景を考察し,活動の改善要因を探る。5―1 学習者による肯定的評価の背景開始時にコース全体で学習者に提示した活動目的は,気軽に書き込み,日本語を使って自身について表現出来るようになるということであったが,アンケート調査では8割以上の学習者から「日本語で書くのに慣れた」「日本語の勉強が楽しくなった」などの肯定的な回答が得られた。さらに,学習者は書き込みと連動して行われた教室でのFBが4技能の向上に有意義な機会であったと評価していることが明らかになった。これらの総合的な印象あるいは実感として6割強の学習者が「いい練習になった」と回答している(4―2―5,「クラスでのディスカッション」「コミュニケーション」「共有」というキーワードが際立って多く見られた(4―2―5,4―2―7)。これをもとに,「日本語かきこ」活動に対する肯定的評価の要因を分析すると,以下の3点に集約できるであろう。3章で述べたように,この活動は主に「書く」ことによって産出機会を増やすという設計意図があったわけであるが,実際には返信するために「読み」,FB時には書き込み内容について質疑応答し,それに付随する話題にやりとりが発展するなど,「話す」「聞く」を含めた4技能を活用する機会が発現している。FBにおけるディスカッションでは,書き込みに使用した文法や語彙をなぞりながら,その語についてメタ的に説明したり,そのために日本語を駆使して内容に関する説明をしたり,クラスメートとやりとりをしたりすることに,必然的に「話す」ことが求められる。FB時のディスカッションについては高評価が得られているが(4―2―5),もちろん,文法的な話ばかりしているわけではなく,様々なトピックについて確認したり掘り下げたり,関連する話題に逸れたりすることも多々あった。すなわち書き込みそのものを巡る実文脈でのやりとりが,実際の場面では起こっていたのである。その結果,4技能の向上に役立つ活動であると評価し,かつ楽しかったとする学習者が多かったものと考えられる。(2)クラス全体で共有することの有益性書き込み時に文法や語彙表記に気をつけたという学習者が多数であることが明らかに59
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