齋藤智美・渡部みなほ・田所直子・川名恭子・田中敦子/総合的言語活動としての「日本語かきこ」FBにおけるディスカッションの効果については,文法・語彙の学習や会話の練習に役まず,文法・語彙の学習や4技能について述べた32項の中には,FBが文法や日本語の知識全般に関する学びに効果的であったことを挙げたものが多く見られ,FBでクラスメートの書き込みを読んだことが書き方の理解につながったとするコメントもあった。また,立ったとするものや,既習の文法や語彙を使ってみることができ,教科書だけではできない練習ができたと評価するコメントがあった。ディスカッションに関するコメントとしては,表2に挙げたものの他に以下のようなものもあり,複数の技能への有益性が実感されていることがうかがえる。・「読むだけだと退屈だが,会話になると学んだものを使わされるので面白い」・「ディスカッションから多くを学び,本以外の練習ができるから重要」次に多かったのは,誤用訂正に関するものである。3―4で述べたように,誤用訂正の有無やその方法はクラスによって異なっていたが,FBによって自分の間違いに気づくことができ,学びが生まれたことを評価するコメントが多くあった。教師が間違いの指摘だけでなく,正しい形を示して直してくれたことを評価するコメントも多く見られた。そして,教師からだけでなくクラスメートからもFBをもらうことができたことを評価し,クラスでの共有が自分の学びにつながったとするコメントも多かった。また,書き込みを音読したクラスが多かったことから,音読による間違いの気づきに触れたコメントもあった。しかし,少数ではあるが,FBにおける誤用訂正が期待通りに行われず,自分の学びに効果的でなかったとするコメントもあった。続いて,楽しさ・面白さに触れたものとして,23項のコメントがあった。これらの中では,単に楽しかった,面白かったというだけでなく,FBにおいてクラスメートの書き込みを読んで,ディスカッションすることを通して,新しい知識を得ることが楽しかったと具体的に述べているものも多く見られた。一方で,FBは評価しながらも,ディスカッションは恥ずかしいから必要ないという意見もあった。学習者間のコミュニケーションという点については,ディスカッションを通して,クラスメートと親しくなれたことを評価するコメントがあった一方で,単に個人的な体験を共有しただけだったとして,物足りなさを述べたものも見られた。さらに,書き込みの内容理解に関しては,5項のコメントがあった。クラスメートの書き込み全部を自分で読んだり,理解したりすることが難しい学習者からは,FBでの読みやディスカッションが内容理解の助けになったとするコメントが寄せられた。一方で,すでに書き込みを自分で読み,理解することができていた学習者にとってはFBでもう一度読むことが退屈に感じられていたようである。その他の項目には,様々なコメントが含まれるが,特に目立ったのは,FBの時間や方法に関するものであった。これらについては,3―4にあるようにクラスによって違いがあったこともあり,評価が分かれていた。例えば,FBの時間については「長すぎた」というものや「短すぎた」というものがあった。また,FBシートについては「よかった」,「印刷物にすると間違いや正答がチェックできて有益」と評価する意見がある一方で,「紙の55
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