早稲田日本語教育実践研究 第2号
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齋藤智美・渡部みなほ・田所直子・川名恭子・田中敦子/総合的言語活動としての「日本語かきこ」・「パーティー,ショー」・「カタカナを打ち込むのは難しかった」・「似たような音の語の書き分け」回答からは,書き込み時に困難を感じる点は,入力の方法という側面のみではないことが明らかになった。書き込み時には,「しゅみ」か「しゅうみ」なのかといった語彙表記の知識を求められることによる困難さもあるようである。4―2―4 書き込み時の留意点書き込み時に気をつけたことを3つ,自由記述の形で回答を求めた。回答は全293項あり,そのうち,文法(文法的正確さ,文の構造など)に気をつけたという回答は全体の約3割の110項にのぼる。その中には,「形容詞の過去形」「助詞の使用」「接続詞」「の,は,で,などのつながり方」など,各自が気をつけた文法項目も具体的に挙げられている。また,授業で学習した新規文法項目を,書き込みに使おうと意識していることも,次のような記述からうかがうことができる。・「クラスで使ったものを使う」・「新しい文法を使う」・「クラスで習った文法を使う」・「新しく習ったことを使う」・「新たに習った文法構造と併せて使う」・「クラスで習った様々な書き方と項目を関連づけて書く」語彙や表記について記されたものは51項あった。特に,語彙については,「習ったことを使う」という回答の他に,「新しい言葉」というものもいくつかあった。この回答は4―2―3にあるような,使用の正しさという側面からだけではなく,読み手への配慮があることが考えられる。これは,進め方のガイダンスの際に,クラスメートにとって未知の語彙である場合には英訳を添えるなどを注意事項として伝えているクラスがあったことも関係しているだろう。また,少数だが「カタカナの表記」や,「なるべく漢字を使う」「正しい漢字」というものに気をつけたという記述もあった。また,読み手を意識するという点では,「漢字ではなくひらがなを使う」「難しい言葉を避ける」などの語彙の面からだけでなく,「みんなを楽しませる」「クラスメートにとって興味深い内容」「みんなに難しすぎなくて面白いかどうか」など,内容面についての回答が18項で見られた。これは,発信の際のみならず「質問にきちんと答える」「みんなとつながること」「他の人との関係性」など,返信でやりとりすることについても他者との関係性を意識していることがわかる。さらに,「日本語で感情表現する」「言いたいことを表現する」「間違いを恐れない」など,日本語で自己表現するという点についても6項の記述があった。他に,「長さ」という回答が14項あり,適度な投稿サイズというものが各トピックによってまちまちであり,ま53

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