早稲田日本語教育実践研究 第2号
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早稲田日本語教育実践研究 第2号/2014/45―64【図2】1週間の活動の流れ例われた。その時間配分や方法などはそれぞれのクラスの状況に応じて各教師の裁量に任された。活動の評価は書き込み1回に対する提出点とし,書き込み回数や内容・文法の誤り等は評価対象としないことを全クラスの共通事項とした。なお,既存のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)ではなく大学内のCourse N@viを利用した理由は,システム上の安全性の確保と,コミュニティメンバー間での活動という安心感を重視したことによる。3―2 書き込み活動を開始するにあたり,本コースの学習者の書く技能はまださほど高くなく,書くことに慣れていない学習者には負担が大きくなるだろうという点が懸念された。加えて,日本語でのタイピングが初めての学習者も多く,仮名だけでなく漢字の入力に戸惑うだろうことも予想された。そのため,学習者には彼らが日常的に活用しているSNSに書き込むような気軽さで取り組めるよう配慮することが教師に求められた。具体的には,書かなければならないという義務感ではなく,書きたくなるようなトピックを選んだり,文字数や長さの指定をせず一言だけの書き込みも可であるとしたりした。Course N@vi上にはクラスごとの「日本語かきこ」用の書き込み欄が設けられ,学習者は時間と場所を問わず書き込めるようになっている。毎週締め切り日が設定されるが,書き込み期間内であれば何度でも書き込むことができ,ほかの書き込みに対する返信も可能である(図3)。また,写真・動画を添付する機能や,書き込みが行われると通知メールがクラス全員の指定アドレスに配信される機能もある。活動開始時には各クラスでガイダンスを実施した。活動目的や進め方についての説明を行った上で,書き込みの際の留意事項が学習者に提示された。日本語入力の方法については,英語による説明書の配付に加え,口頭での説明や実際の入力練習を行ったクラスもあった。内容は各クラスの特徴に合わせて多少の違いがあり,書き込みの長さや既習語彙・文型の使用を指定したクラスや,クラスメートの書き込みへの返信を推奨したクラスもあった。特に表記と語彙に関しては,漢字にはルビをつける,読みやすいように分かち書きにする,クラスメートがわからないだろうと思う語彙には英訳をつけるなど,読み手を意識して書かせるための指示を明確にしたクラスが多かった。活動が進む中で学習者の反応を見ながら,これらの留意事項は適宜調整された。48

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