早稲田日本語教育実践研究 第2号
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1)。活動の主たる目的は,個々の学習者が教室の内外で習得した日本語を使って自身につ齋藤智美・渡部みなほ・田所直子・川名恭子・田中敦子/総合的言語活動としての「日本語かきこ」3.実践概要N@vi上のBBSに書き込みを行った。活動は1週間単位で区切られるため,学習者はタついて,実施した振り返りアンケート調査の分析をもとに考察する。3―1 「日本語かきこ」の活動目的と枠組み「総合日本語1」コースは,初級前半レベルの学習者を対象に『みんなの日本語初級Ⅰ』を主教材として週に5コマ(1コマ90分)15週のスケジュールで運営されている。授業は2,3名の教師によるチームティーチングで行われており,文型積み上げ式シラバスに基づき,語彙や文法の学習を中心に,会話,作文,スピーチ発表などの表現活動を組み合わせた総合的な日本語学習が進められている。初めて日本語に触れる学習者も在籍することから,日本の生活及び日本語に慣れることと,これから続いていく日本語学習の基盤作りをコース目標としている。学習者は本学の学部学生,1年間の交換留学生,日本語のみを履修する別科日本語専修課程の学生(別科生),大学院生,研究者など所属は様々であり,国籍や年齢も多様である。また,日本語の必要単位数もそれぞれ異なり,単位の取得が必須ではない学習者もいる。「日本語かきこ」は,このような「総合日本語1」コースにおいて全クラスで共通して行われる表現活動のひとつである。2011年度秋学期は全12クラス(1クラス10,11名)が開講され,この活動はスケジュールの第8週から7週間にわたって一斉に実施された(図いて表現できるようになることである。前述のように多様な背景を持つ学習者が混在するクラスにおいて,日本語学習に対する動機や必要度は人によって異なり,それぞれ興味のある分野や専門領域も一様ではない。それを利点とするには,学習者同士が互いの日本語リソースとなるような環境作りが必要なのではないか。そのように考えた結果,各自が自律的に獲得した日本語の表現や語彙を書く行為によって産出し,クラスで共有することを目指してデザインされたのが本活動である。活動の枠組みは,授業時間外での書き込みと,教室でのFBを組み合わせたものから成る(図2)。まず,学習者は授業時間外に各クラスで設定された締め切りまでにCourse スクとして週1回以上の書き込みが求められた。次に,教室で書き込みに対するFBが行【図1】コースにおける「日本語かきこ」のスケジュール47

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