早稲田日本語教育実践研究 第2号
50/102

やFB方法について教師間で情報交換することによって,統一された枠組みの中でも,多早稲田日本語教育実践研究 第2号/2014/45―642.先行研究て生まれた教師の工夫や意図を学習者がどのように受け止め,そこから何を学んでいたのかについて考察し,今後の実践に向けての課題を探る。さらに,初級前半レベルでの言語表現活動としての「日本語かきこ」の意義と示唆についても述べていきたい。「日本語かきこ」はオンラインでの書き込みと教室でのフィードバックとを組み合わせた活動である。オンラインでのやりとりのみで終わるのではなく,それらの書き込みをクラスで実際に対面し,共有するものである。このような実践はいくつか報告されており,北出(2007)では,中上級から上級の日本語学習者と日本人大学生に,BBSへの書き込みによるオンラインでのやりとりをさせた。その中で学習者が用いた表現について,書き込みをした学習者同士で話し合わせた結果,対面で共有したことによる学びが見られたと述べている。また,大塚(2007)は,韓国の大学の日本語上級クラスで,オンラインでの添削と対面でのFBを組み合わせて作文授業を実施し,オンラインで添削されたそれぞれの学習者の作文をもとに,教室で討論を行った。終了後のアンケート調査では,オンラインと対面の組み合わせにより,メタ的に考えることができたと学習者から評価されていた。活動の目的について見ると,北出(2007),大塚(2007)が書き込み内容の添削を中心に,正しさに焦点を当てた共有をしているのに対し,「日本語かきこ」は正しさのみならず,その内容やそこから広がる話題によるコミュニケーション活動を目的としている。また,上記の先行研究においては中級から上級レベルの学習者を対象としているが,「日本語かきこ」は初級前半レベルのクラスで行われている。初級レベルでの,教室での日本語学習とオンライン上の書き込みを組み合わせた活動報告は管見の限り見られない。その意味で「日本語かきこ」は,初学者を含む,初級前半クラスの学習者が自己表現をするという点において新たな試みであると言える。「日本語かきこ」については,活動開始からこれまでに,教師の実践意図や具体的活動に注目した報告が行われている。川名他(2012)では,各教師が文型・語彙の練習やクラス内コミュニケーションの活性化等の意図を持って臨んでいたこと,そしてそれらの意図様な試みが行われたことが報告されている。渡部・田所(2013)は,異なる活動意図を持ってデザインされた4クラスでの指示内容や活動の展開を比較・分析し,学習者の書き込みやクラスでの話題の共有のされ方が異なっていたとしている。齋藤・古賀(2012)は学習環境デザインという観点から,1つのクラスにおける実践を分析し,書き込みやFBによる4技能の向上に留まらず,書き込み内容がクラスの共有文脈として積み上がり,その文脈を学習リソースとして活用できると提案している。上記の実践報告では,教師が活動をどのようなものと位置づけ,デザインし,実際にクラス全体としてどのような活動となったかについて述べられている。しかし,教師がデザインした活動を学習者がどのように捉え,どう評価しているのかについては,まだ報告がされていない。本稿では,初級前半レベルの学習者がどのような意識を持って「日本語かきこ」に取り組み,どう評価したかに46

元のページ  ../index.html#50

このブックを見る