早稲田日本語教育実践研究 第2号
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早稲田日本語教育実践研究 第2号/2014/25―44時,たくさんべんきょうをしてはいけます。No.15「日本でたいへんです」日本で,色々物をするのはたいへんです例えば,今はホストファミリとすんでいます。そしてときどきルールはむずかしいのはたいへんです。(中略)ときどき早稲田大学で,少ない物をするのはたいへんです。本当に早稲田大学と□□大学は違うです。(中略)早稲田のどろくはとてもきびしです。例えば三番のどうろく後で,クラスはカンサルができません。No.17「クラスでしてほしいこと」わたしの一番のおねがいはかんじを教えてくださいませんか。本当に日本語が読めるように,かんじを勉強しなければ,なりません。次に,3時間のクラスをやめてくださいませんか。No.20「日本に来たばかりのとき」日本にきたばかりの時いろいろな物をしたかったです。一つ目は日本中を旅行するはずだったのに高くて,あまりできませんでした。(中略) 日本でこの着物はとても安いですが,高すぎました。とうとう日本に来た時,たくさんかんじがわかりたかったのに,二レベルの日本語でかんじを勉強しません。たぶん次のがっきに,かんじのクラスをとるでしょう。上記のHの作文は,全てA&T(1973)の(1)(3)(4)にあてはまり,今の自分が履修している授業科目を,履修すべきではなかったのに,キャンセルし忘れて悩んでいることや,漢字に対する学習意欲,自分の日本語に対する不安などを繰り返し,述べている。松島(2004)でも同様に,すべて(6)(8)にあてはまり,「内面的な自己開示」をしているといえる。以上,一人一人の作文の分析をまとめると,個人差はあるが全員に「深い自己開示」が見られた。特に学生Aは1つの作文に多数の「深い自己開示」が見られた。No.14の頃から,授業内でも「○○さんが好き」「日本人と結婚したい。誰か紹介してほしい」など自由な発言が多く見られた。川口(2012b)の理念である「叱られず笑われず無視されない自由な表現空間の保証」が得られたからこそ発言ができたと考えられる。また,学生B・D・E・F・G・Hは時間が経つにつれ,自己開示が深まったといえる。これは,「支持的風土」が醸成されてきたことに起因すると考える。特に学生Dは最初の頃,他の学生に比べ日本語能力が低く自分の気持ちをうまく表現できなかったが,徐々に文章も長くなり自分の気持ちを伝えられるようになってきた。まさに川口(2012b)が提唱する学習者の個性が反映されるような課題を通して,未習語彙の供給など,適切な表現に向けての指導を無理なく行うことができた結果であると考えられる。一方,学生Cは最初から一定して「深い自己開示」が見られた。積極的に授業内で話すタイプではなかったが,「個人化質問」を繰り返しながら作文を書くことが楽しい,とインタビュー中述べていた。5―2 目的②結果と考察「表6」に,ESDQの項目番号に従い,学生の作文ごとに該当の番号を入れた。40

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