早稲田日本語教育実践研究 第2号/2014/25―44No.4,13,18,21いずれもFの故郷への思慕が繰り返し感じられA&T(1973)の(1)No.13は,更にA&T(1973)の(6),松島(2004)の(7)にあてはまる。ここでもまた,慢したりさせたいです」など独自の教育観が出ている。また「自分で決めさせたい」「自信を持たせたいです」「私をしんぱいさせません」など,子供に対し自立を求めるEの独自の考えが現れている。これは,A&T(1973)の(2)にあたる。学生FNo.4「あなたの部屋の窓から何が見えますか」私の部屋の窓からおてらが見えます。車がたくさん見えます。車の音が聞こえますから,この寮はちょっとよくないです。駅から寮まで遠いです。友達とすんでいません。No.13「日本へ来てからできるようになったこと,できなくなったこと」日本に来てから,毎日日本語を聞いていますから,日本語が聞けるようになりました。でも同じ町から来た人はいませんから,◎◎弁が話せなくなりました。それはとても残念ですね。ひとりぼっちで住んでいますから,掃除できるようになりました。(中略) 日本に来てから,友だちを家族に会えなくなりました。お祭りのとき帰れなくなりました。両親が見なくなりました。早く帰ると思います。No.18「私がもってきたもの①」中国のファミリーマート(以下FM)が好きです。学校の近くにあって買い物しやすいです。(中略) 毎日友達と一緒に行きます。行き過ぎたら店員さんと友達になりました。授業の後で人が大勢いて入りにくいです。でもFMの食べ物を食い過ぎて,嫌いになりました。日本のFMの値段は高すぎますから,時々学校の隣のFMを思い出します。No.21「わたしがもってきたもの②」今日私がもってきたものはこれです。中国でFMにもらったステッカーです。(中略) 中国のFMが大好きです。(中略) FMの食品を食べすぎたのに,全然嫌いになりませんでした。毎日授業のあとで,FMでお菓子を食べたり,あかるい店員さんと話したり,クラスメイトと宿題を書いたり,本当にうれしかったです。日本でFMはもっとありますが,値段はとても高いし,お店で誰も知らないし,かわいいステッカーもないし,すきじゃありません。このステッカーを見ると,学校の隣のFMを思い出して,高校生のときを思い出して,友だちと一緒に楽しい時間を思い出します。(3)に該当すると思われる。No.4では,今住んでいるところに不満を感じている。その他の作文と合わせて考えると,Fの故郷への深い思慕の思いから,対照的に自分の今住んでいるところをネガティブにとらえていると思われ,松島(2004)の(6)(8)に該当する。故郷に対する深い感情が描かれている。No.18では,「自分のもってきたもの」というテーマで自分の好きな持ち物について作文を書く日だったが,FはFMが大好きだから,FMについて書かせてほしいといってきた。松島(2004)の(8)に該当する嫌な思いを書いているが,実際は,FMに対する深いこだわりや愛情を書いているように思われる。それは,No.21ではFMの食べ物をいくら食べても嫌いにならないといい,No.18と正反対のことを書いていることから推測される。No.18,21はいずれもA&T(1973)の(1)(2)(3),38
元のページ ../index.html#42