早稲田日本語教育実践研究 第2号/2014/25―44レーションを感じていると答えていた。また,自分がチャンピオンになったことに対して,うれしく思い,その友達に伝えたら,日本語が話せないのに,どうしてチャンピオンになったか,不思議に思われたそうである。しかし,そのようなことがあっても,更に頑張ろうといった学習意欲の強さも窺える。これらはA&T(1973)の(2)(3)(4)(6),松島(2004)の(4)(6)(8)にあてはまる。また,No.8では,「冬休み」について書く作文においても,自分の日本語が上手じゃないことを気にしている。これは,松島(2004)(6)にあてはまる。日本語が話したいのに,話せないことにジレンマを感じていると同時に,日本語が上手になりたいという思いが作文に繰り返し現れていることから,No.3,8両方が,A&T(1973)の(1)にあてはまるといえる。No.14では,Aは初めの頃は,一般的な幼い頃の経験を書いていたが,4行目から,隣の家のグアバを取り,父に怒られた経験について書きだしている。インタビュー時に詳しく聞いたが,隣の家の庭にグアバがたくさんなっていたのを,棒でつついて取ってしまったら,隣の人から,お父さんに苦情が来て,お父さんはAにお金を渡し,グアバをたくさん買って来させたという話だった。Aはグアバが,あまり好きではないが,棒でつつくと落ちてくるのがおもしろいので,つい落としてしまったと言っていた。この作文はA&T(1973)の(1)〜(6)及び松島(2004)の(7)にあてはまる。No.15では,職場でのいやだったことを記述している。この作文のテーマは,「日本でたいへんなこと」である。最初は,日本での大変だったことを書いていたが,最後に,メキシコでの職場の体験を書いている。インタビューで詳しく尋ねたところ上司は自分や同僚のことを頼りにしてくれなかったことを不満に思っていると話していた。A&T(1973)の(2)(3)(6),松島(2004)の(8)に該当する。学生BNo.12「生まれ変わるなら人間がいいですか,人間じゃないほうがいいですか」◎◎さんは生まれ変わるなら,人間がいいと言っていました。でも私は人間じゃないほうがいいと思います。私は動物になりたいです。特別にパンダになりたいです。パンダは今珍しいですから,おおぜいの人はパンダが大好きです。人気がたくさんありますよ。パンダになるなら,毎日働かなくでもいいですよ。授業にでなくでもいいです。お金がいりません。食べ物がたくさんあります。ほかのパンダの友達と一緒にあそんで,とてもうれしいです! だから,私は人間じゃないほうがいいと思います。No.18「私がもってきたもの①」私がもってきたものはこのマフラーです。このマフラーはねだんがやすいごすけど,特別な意○があります。去年彼女があげてもらいますから。(中略) このマフラーがしている時,センスがあると思います。そして,彼女も思っています。秋の時,このマフラーは使いやすいくて,あたたかいです。でも今は冬です。天気がさむすぎて,ちょっと使いにくいです。でも,これは彼女がくれたプレゼントなので,いつでも大好きです!No.20「日本にきたばかりのとき」日本に来たばかりの時,日本語を勉強したことがありましたが,日本語があまり話せませんでした。(中略) 日本へ来た前にはわさびがおいしかったと思いましたけど,34
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