早稲田日本語教育実践研究 第2号
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多賀三江子・林  麗/「個人化作文」における自己開示の分析5―1―3 学生個人(A〜H)の分析本節では,各学生の作文で,A&T(1973)の「深い自己開示」や,松島(2004)の「内面的自己開示」が見られたものについて述べる。なお,作文は特に特徴の見られたものについてのみ言及した。文中の,○は文字が読み取れなかったもの,◎や□は固有名詞のため書き換えたものである。学生ANo.3「1年前と今」1年まえはスペインごあまりしかわかりませんですたが今はスペイン語も日本語もわかります。今ともだちといっしょうにときどき日本語がはなせます。でもいつもスペイン語をはなします。私の日本人ともだちは私に「日本語がはなせません。せんせんわかりません」といいました。だからいつもスペイン語をはなします。でも私はとても日本語をはなしたいです。おととい私はかのじょに「シャンピオンになりました」といいました。でもかのじょは私に「シャンピオンになりませんでした。日本語ははなせませんでしたから」といいました。今私は日本語をがんばります。とてもがんばります。今私は6か月日本語をべんきょうしています。まだはなせません。No.8「冬休み」ふゆやすみはきょうとへいこうと思っています。私はともだちといっしょにいこうと思っています。金かくじときよみずてらにみようと思っています。ゆうめいなかいわをみたいです。そしてあるこうと思っています。ともだちの家は日本語をはなそうと思っていますけどあまりじょうずじゃありません。いさかやへ行きたいです。そしてビールをのもうと思っています。No.14「子どものとき」毎日テレビがすきでした。アニメをよくみました。そして,いつも母は「テレビをみるな」と言われました。そのあと,みちでともだちといっしょにあそびました。3じかんぐらい。母は「家にはいろ」と言われました。私はわるい子どもでした。学校で私は先生にちかられます。私は授業をわかりませんでしたから。ある日,私はきんじょに“グアバ”をとうれました。そして,私の父は私にみられました。父は「なにをしました」と言ました。父は私によくしかれましたとおこりました。その時,父は私に金をあげましたと私はみせへ行きますとグアバをかいました。No.15「日本でたいへんです」1年まえメキシコで私ははたらきました。毎日(中略)くるまをうんてんするのはたいへんです。しことはスペイン語のせんせいでした。毎日かいぎをするのはたいへんです。私のじょうしはかいぎでよく話すのはきらいです。でも私のクラスとがくせいはすきです。学生A(以下,「A」。他の学生についても,以下同様に処理)は,No.3に,クイズで,チャンピオンになったことをとてもうれしく思っている様子を描いている。それと同時に,日本人の友達に対して,感じている不満を表している。インタビューでは,日本人の友達にAの日本語がわからないと言われ,二人で話す時,スペイン語でばかり話され,フラスト33

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