早稲田日本語教育実践研究 第2号
32/102

⑩ 血縁的自己:親に関する不満や要望早稲田日本語教育実践研究 第2号/2014/25―44諸側面の下位分類を更に詳しく述べた榎本(1997:234)の自己開示質問紙の項目を加え,一つにまとめたESDQの項目分類を以下に記す。精神的自己 ① 知的側面:知的能力に関する自信・不安や知的な関心事に関すること身体的自己 ④ 外見的側面:容姿・容姿や外見的魅力に関すること社会的自己 ⑦ 私的人間関係の側面:同性関係,異性関係なお,上記項目には⑫〜⑭といった「自己に直接言及しないが本人のパーソナリティが窺われる話題」(榎本1997:15)も含んでいる。初級学習者の作文の表現内容に関しても,上記ESDQを使用して,自己開示の「広がり」を調べることができると判断する。2―2 外国語教育学の場での自己開示縫部(2001:179)は,外国語教育学の場においても,ただでさえ緊張する教室の中に,緊迫した雰囲気がある場合は,学習者に自己防衛的心理が働き,自己を高める外国語学習はできなくなると指摘している。そのような状態を防ぐために,縫部(2001:219)は,教師は教室の雰囲気を和らげ,学習者が「自己を開くこと」,すなわち彼らの自己開示を援助しなくてはならないとし,更に「自己開示がどの程度できるかがリアルコミュニケーションの成否を決めてしまう」(縫部2001:219)と続けて,自己開示の重要性について述べている。また,自己開示は教室風土にも影響されるとし,教室風土を(1)「防衛的風土」と(2)「支持的風土」の2つに分けており,(1)は不安や脅威を感じて自己防衛するような,そして(2)はお互いの個性を尊重し,容認し合うような教室の雰囲気を指すとしている(縫部2001:186)。縫部(2001:190-191)は,学習者の自己開示を促す「支持的風土」を醸成させる方法として,(1)学習集団の「内集団化」(2)援助的対人関係の形成(3)教師の間接的行動/促進的態度・行動/フィードバック行動4)の3つを挙げている。(1)の「内集団」とは,クラスの成員である学習者一人一人の主体性が容認され,成員相互に「柔軟で機能的且つ心理的に濃密な結びつきを持つ集団」(縫部2001:191)のことで,その② 情緒的側面:心を傷つけられた経験,情緒的に未熟と思われる点などに③ 志向的側面:拠りどころとしている価値観⑤ 機能・体質的側面:体質や健康,運動神経に関すること⑥ 性的側面:性に関する関心や悩みに関すること⑧ 公的役割関係の側面:興味を持っている業種・職種や人生における仕事⑨ 物質的自己:こづかいの使い道,服装の趣味に関すること⑪ 実存的自己:孤独感や疎外感,人生における不安や生きがいに関すること⑫ 趣味・趣向に関する側面:休日の過ごし方,芸能やスポーツに関するこ⑬ 意見・見解に関する側面:文学や芸術に関する意見,最近の大きな事件⑭ 噂に関する側面関することの位置づけに関することと,趣味としていることに関する意見28

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る