早稲田日本語教育実践研究 第2号
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早稲田日本語教育実践研究 第2号/2014/9―24要に応じて辞書を見てもよいという指示も与えた。学習者は個々に時間制限無しでメールを作成した。統制群の学生は,第一稿のメールをタイプした後,研究者に送信した。その後約10分間の休憩をはさんだ後,第一稿のメールにつき自分で出来るだけ改善するように指示を受け,修正後再び研究者に送信した。実験群の学生は,第一稿を記入し研究者に送信後,資料3に示した振り返り質問票に英語で回答した。その後振り返り質問票で気づいたことなどを考慮に入れ第一稿のメールをできるだけ改善して第二稿を作成するように指示を受けた。修正後研究者に第二稿を送信した。3―2―2.分析方法実験群と統制群が作成した修正前と修正後のメールを比較することにより,振り返りの困難な部分を明らかにすることを試みた。まず実験群と統制群それぞれの学習者の産出量と正確性を比較した。産出量に関しては,第二言語学習者にとって簡潔に文をまとめることは難しい(Chen, 2006)ことを考えると,本研究の参加者にとっても不要な文章の産出を抑えることは困難であると予想される。正確性に関しては,全体的に文章の量が増えることに伴い不正確な文章も増えることが考えられる。あるいは学習者が文章の内容より正確性の改善に取り組んだ場合は,Maier(1992)が指摘するように,文が正確でも内容は不適切なままになる可能性がある。上述の産出量と正確性に関する予測を数値で確認するため,産出量に関してはTユニット4)の総数と節の総数,文法上の正確性を測る手段としては誤用のないTユニットの割合を用いて修正前と修正後のメールを比較した。内容の適切さに関しては,振り返り質問票で取り上げられた各項目が,それぞれの群のメールにいくつ含まれているかを比較することで検証した。さらに振り返り質問票に記入した内容が具体的にどのようにEメールの文章に反映されているかを比較分析した。表1 参加者の情報注:アルファベットは学習者の頭文字を表す14

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