早稲田日本語教育実践研究 第1号
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日本語授業について9のカテゴリーを作成し,これを4のグループにまとめた。以下,具体的に見ていく。●5目的と授業を関連づける授業で習って外で応用する教室は知識を得る場所である授業によって学習が義務になる授業で勉強すると自信が持てる教室では普通の日本語が使えない授業内容や教材がつまらない教師の存在が授業の認識に影響する定 義現されている。コードとして取りだされたものは,いずれも授業が「知識や基本を」「習得できる」場所として位置づけられている。このことから,「基本知識の獲得」というカテゴリーを生成し,その定義を「教室は知識を得る場所である」とした。一方,3から5の発言においては,授業での知識の習得は外での応用を前提とするものであると考えられており,コードにも,基礎-応用のロジックを見出すことができる。そこで,新しいカテゴリーとして「基礎-応用の基礎」を作成し,定義を「授業で習って外で応用する」とした。以上の要領で授業とクラスメイトについて複数の留学生が語っている内容からコードを導き出し,コードを比較,分割,統合することでカテゴリーにまとめた。4-1.日本語授業について以上の手順にしたがって発言から作成されたコードをまとめた「カテゴリー」とその定義,そして『グループ』を以下に示す。表4は,日本語授業についてのものである。日本語授業については「学習目的−授業」は,学習目的を授業での日本語学習に関連づけるコードから生成したカテゴリーである。ユンは,日本で大学院に進学するつもりであり,この授業で標準的な日本語を勉強することは大切であるといった。また,マイケルは,個人的な趣味であるライトノベルを読むために授業をとっているという。授業は学習者それぞれの学習目的に即して選ばれたものであり,留学生たちは授業での日本語学習を自身の学習目的に関連づけていた。「基礎知識の獲得」は,教室は基礎知識を得る場所であるというコードをまとめたものである。リーは,授業を知らない知識を得るところであるとした。特に自身の学習目的と関連づけずに,知識を得る場として授業を捉えているものをここにまとめた。「基礎−応用の基礎」は,授業で基礎を習うことで外で応用できるというコードから作成したカテゴリーである。留学生たちは,この授業で基礎を習うことで教室外で応用できるようになるとしていた。「学習目的−授業」,「基礎−応用の基礎」の二つのカテゴリーは,授業を外の留学生活の環境に表4 日本語授業についての発言から生成されたカテゴリー生活での位置づけ価値(+)価値(−)価値づけの要因牛窪隆太/留学生は日本語授業をどのように位置づけているかカテゴリー学習目的−授業基礎−応用の基礎基本知識の獲得学習のペースメーカー卒業のための成績・単位いい成績や単位をもらえる自信感の創出教室≠普通の日本語つまらない教師の存在論 文4.結果

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