1)互いを知ること3)接触5)協調7)カリキュラム外の活動9)共通の脅威●69学期の最初の頃の語学授業は教室内の緊張が高いのがふつうである。学習者は互いをまだよく知らないまま孤立しており,情報不足のため不安感が強い。不安感や緊張で目標言語を充分に使うことができなかったり,自己防衛が強くなったりすることも有り得る。また,そういったことがストレスとなって,教師やクラスメートに対し忍耐を欠いたり,密かに敵愾心を抱いたりすることもある。グループ・ダイナミクスの観点から,Dörnyei, Z., & T. Murpheyは,学習者が互いの外観や表面的な印象の「好き嫌い」に応じて,初期段階の集団を形成していく傾向があることを指摘している。さらに,この初期の「好き嫌い」が,さまざまな要因により,互いの受容,つまりラポールへと変容し,強化され,やがてクラス全体の一体感へと変わっていくというのである。実際,舘岡(2012)によると,学習者がクラスメートとうまく対話できず,協働に参加すること自体を拒否した事例も報告されており,対話などの協働的な学習活動に入る前に,ごく早期の段階でラポール構築が必要とされていることが認められている。そこで,Dörnyei, Z., & T. Murphey(2003)は,教室運営のごく初期段階から,互いの異質性をよく認め合い,受容し,ラポール構築へと意識的に集団形成を仕向けるよう勧めている。ラポールを強化する要因として,Dörnyei, Z., & T. Murpheyは次の11項目を挙げている3)。2)近接感(物理的距離)4)インターアクション6)グループによるやりがいのある経験やグループ・タスクの成功8)困難な経験を共有すること10)グループ間の競争11)教師による模範ラポールに関わる上記要因うち,1)互いを知ること,2)近接感(物理的距離),3)接触,4)インターアクションの4項目については,教師が教室内の座席配置に配慮することで,かなり充たされる部分がある。そこで,上記4項目を考慮に入れ,学期の第一日目から座席配置を整備して,学習者同士,互いの外観のみならず,表情やボディ・ランゲージといったインターアクションのレベルで互いを直接的に視認できるようにし,互いの異質性や共通性を無理なく印象付けるようにする。具体的には,たとえば少人数制クラスの場合,Dörnyei, Z. & T. Murphey(2003)が示しているように,半円状またはU字状(セミサークル)や円状(サークル)の座席配置などは,ラポール構築にかなり有効と思われる。たとえば,セミサークルの座席配置の場合,学習者は,コースの初日からクラスメートと自然に顔を向き合わせることができるので,互いの外観,仕草,態度等,共泉水康子/支持的教室風土をめざしてエッセイ&インタビュー/エッセイ3.ラポール構築へ向けた教室環境
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