早稲田日本語教育実践研究 第1号
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abcdefg①○②○③○④○⑤○⑥○△△○○○○―――――△―△○△○○○○○○○△○○○○○○○○―表1からわかるとおり,英語教育の教材では,どれも⑤プロソディー・シャドーイングと⑥コンテンツ・シャドーイングの両方が取り入れられている。これは,目標が話す力7)とともに,聞く力●39各練習項目を行う順番①→②→③→④→⑤→⑥④→⑤→③→⑥③→④→⑤⑥③→④→②→⑤→⑥⑤→⑤→⑤/④→⑤→⑤の向上に大きなポイントが置かれているためであろう。日本語教材を見てみると,e・fでは,英語教材ほどではないが,レベルに応じて,特に中上級向けでは,コンテンツ・シャドーイングについても触れられている。この教材もやはり,「聞く・話す」の両方の向上を目標に掲げている。一方,gは発音の上達に重きを置いている教材で,コンテンツ・シャドーイングは取り入れられていない。自然でなめらかな発音を身につけることを目標に,そのために必要な音声知識も得ることができるようになっている。また,アクセント・マーク,ピッチ・カーブによって音声特徴が視覚的に示されているのも特徴のひとつである。以上のことから,多くのシャドーイング教材が「話す」,「聞く」などの複数の能力向上を目指しており,一度にいろいろな練習が盛り込まれていることがわかる。そのため,学習者はプロソディー・シャドーイングをしなければならないときに意味理解にとらわれてしまう可能性があり,アクセントなどのプロソディーに焦点を当てにくいことが考えられる。また,各練習項目を行う順番も教材によって様々である。使用する教材によって異なる方法でシャドーイング実践を行うことになるため,どの練習方法が効果的なのかがわかりにくい。学習者の発音面での向上を目指すのであれば,プロソディー・シャドーイングに絞り込んで授業に取り入れることが考えられる。学習者にとっては,発音に意識を向けることができ,滑らかな発音を目指した練習の機会が得られることになる。一般的な日本語クラス8)での活動を考えたとき,プロソディー・シャドーイングであれば,通常の学習項目に組み入れていくことも可能であろう。つまり,総合型教科書の本文の音読や会話練習,口頭発表練習などの様々な教室活動の一部として,シャドーイング練習を取り入れるならば,教師の誰もが音声指導を気軽に実践するきっかけとなると期待される。表1 教材等にみられるシャドーイング練習方法教材大久保雅子,他/アクセント習得を促すシャドーイング実践練習項目 ○5) ―6)論 文Stage1(初級)①→②→④③→⑤→⑥Stage2(中級)②→④③→⑤→⑥Stage3(上級)⑤→④③→⑤→⑥ ○4)⑤⑥→⑤⑥→③→④→⑤⑥

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