●37大久保雅子・神山由紀子・小西 玲子・福井貴代美本研究はシャドーイング実践によるアクセント習得と学習者レベルの関係を明らかにし,その有効性を検証することにより,効果的なシャドーイング実践方法を提案するものである。本研究では,異なる日本語レベルのクラスにおいて5週間にわたるシャドーイング実践を行い,実践期間前後に音読によるプレテストとポストテストを実施,シャドーイング実践とアクセント習得の関係を検証した。調査結果から,10分程度のシャドーイング実践により,個々の語のアクセントを示さずとも,アクセント習得が促されることが示唆された。また,どのレベルにおいてもアクセントが向上することが明らかになったことにより,初級レベルからシャドーイング実践を開始することが可能であることが示された。実践で用いる素材については,学習者のレベルを問わず,様々な素材が使用可能であることが示された。キーワード:プロソディー・シャドーイング,音声指導,アクセント, シャドーイング素材,学習者の日本語レベル大久保雅子,他/アクセント習得を促すシャドーイング実践Aiming for an effective way of practice論 文1.はじめに□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□Shadowing Practice to induce accent acquisition:要旨論 文1-1.日本語教育におけるアクセント指導日本語教育における音声指導項目は,単音・拍(特殊拍)・リズム・アクセント・イントネーションなどがある。これらの項目の中で,アクセントはそれぞれのことばによって決まっており,知識として覚えることが必要とされる。最近の総合型教科書において,語彙リストにアクセントが付与されているものも複数みられる。しかし,実際の日本語教育現場において体系的にアクセントを指導することは少ない。またその導入,練習の方法は決まったものがあるわけではなく,各機関あるいは個人などで試行錯誤の上,実施しているのが現状である(鹿島2010)。そのため,アクセントに関する知識がない学習者も少なくない。また,中級以上になってから自然な日本語発音を身につけることを目指してアクセントを覚えようとすると,今までに習得したことばのアクセントを一から覚えなおさなければならず,学習者にとって負担が大きい。さらに,「今まで覚えたことばのアクセントを辞書で調べても,会話ではアクセント核の位置を意識することができない」という学習者の声も多く聞かれる。このような現状に対処するためには,教師の誰もが行えるアクセント指導を明らかにする必要がある。現在,シャドーイングは韻律部分,特にアクセントの習得に効果があると言われているが,実践可能なシャドーイング方法が示されれば,多くの教師にとってアクセンアクセント習得を促すシャドーイング実践 ―効果的な実践方法を目指して―
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