(B–2)マイテのように,大学の日本語授業以外の場でのみ実現できる日本語学習を重視する学習(2)日本語学習と卒業後の職業の関連づけ●32「主体的日本語学習」から「授業依存的日本語学習」へとシフトした。(C–2)リザは,1学期開始時には,授業内外のリソースを活用し,「主体的日本語学習」に取り組んでいた。しかし,その後,「授業依存的日本語学習」を行うようになった。②学習者は,様々な形態で「主体的日本語学習」を行っている学習者は,それぞれに多様な形態で「主体的日本語学習」を行っていた。例えば,リソース活用に関しては,(A–3)イヴ,(B–1)アメリ,(B–2)マイテ,(C–2)リザのように,大学の日本語授業内外のリソースを活用し,日本語学習に取り組んでいた学習者もいれば,(A–2)ルカのように,日本語授業内のリソースから日本語授業内外のリソースへと活用するリソースの種類が拡張した学習者もいた。また,学習環境に関しては,(A–1)ジュリのように,大学の日本語授業の内外で,日本語知識(語彙)の習得を学習環境の中心に据える学習者もいれば,(A–2)ルカ,(A–4)ローラ,者もいた。本章では,5–2で述べた分析結果を踏まえ,「ポートフォリオ」作成活動を次の二つの観点で考察する。①「ポートフォリオ」作成活動は,多様な日本語学習者がそれぞれに独自の「日本語学習と自身の人生のつながり」を省察する機会の一つとなっていたか。②「日本語学習と自身の人生のつながり」を省察することにより,学習者はどのように変容する可能性があるか。「ポートフォリオ」作成活動は,日本語学習者が「日本語学習と自身の人生のつながり」を省察する機会の一つとなっていた。学習者は,「ポートフォリオ」作成活動をとおし,「将来像と日本語の関連づけ」を行った上で,「将来像と日本語の関連づけ」に即し,「目標」を設定し,学習を進めることにより,「人生中の日本語の位置づけ」を行っていた。「ポートフォリオ」作成活動をとおし,「日本語学習と自身の人生のつながり」を省察することにより,学習者は次のように変容する可能性がある。(1)日本語学習と日本語学習以外の学習との関連づけ学習者は,大学の日本語科目によってのみ学んでいるわけではない。大学の日本語科目以外にも,日本に関わる専門科目や日本学科以外の日本語学習の場,他の専門に関わる学習の場等,様々な場で学んでいる。「ポートフォリオ」作成活動は,学習者に自身の学習環境を俯瞰し,複数の学びの場がどのように関連し合っているかを省察する機会を提供する。学習者は,「ポートフォリオ」作成活動をとおし,「日本語学習と自身の人生のつながり」を省察することにより,日本語学習と日本語学習以外の学習を関連づけつつ,自身の学習環境をデザインできるようになる可能性がある。5–1で述べたように,学習者には,日本・日本語に関連する職7)に就くことを希望する学習者もいれば,日本・日本語に関連する職に就くことを希望しない学習者もいる。また,日本・日本語に関連する職に就くことを希望する学習者でも,進級するにつれ,5–2–1で挙げた(A–4)ローラのように,「人生中の日本語の位置づけを喪失」し,日本語とは関係のない職に就くことを志向するようになる学習者も少なくない。「ポートフォリオ」作成活動は,学習者に自身の日本語学習が卒業後の職業とどのように関連するかを省察する機会を提供する。学習者は,「ポートフォリオ」作早稲田日本語教育実践研究 第1号/2013/17-356.考察
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