1)マリナは,大学の日本語授業をクラスメイトと協働的に日本語を学習する場として位置づけて(A–4)ローラや(B–1)アメリのように,大学の日本語授業を「仲間との場」であると位置づけた2)日本語学習●31山内 薫/フランスの国立大学における日本語ポートフォリオ作成活動論 文同じ「仲間との場」という位置づけであっても,その内実は多様である。(A–4)ローラや(B–1)アメリは,大学の日本語授業をクラスメイトとの出会いや交流の場として位置づけている。(C–いる。(A–1)ジュリは,大学の日本語授業を協働そのものを学ぶ場として位置づけている。また,上で,安心して日本語で表現できる場として位置づけている場合もある。②日本語知識・技能獲得の場/練習の場である「日本語知識・技能獲得の場/練習の場」という位置づけには,時間の経過に従って変化するというプロセスが見出された。まず,「日本語知識・技能獲得の場」という位置づけに関しては,(A–1)ジュリ,(A–3)イヴ,(B–2)マイテのように,1学期開始時より一貫して「日本語知識・技能獲得の場」と位置づけているような変化のないプロセスを経る学習者がいた一方で, (A–4)ローラ,(C–1)マリナ,(C–2)リザのように,日本語授業における学習を継続することより,日本語授業に「日本語知識・技能獲得の場」という位置づけが加わるというプロセスを経る学習者もいた。次に,「練習の場」という位置づけに関しては,日本語授業に継続的に参加することをとおし,(A–2)ルカのように,1学期開始時より一貫していた「日本語による口頭表現を聴く場」という位置づけに他の位置づけが加わるというプロセスを経る学習者がいた一方で,(B–2)マイテや(C–2)リザのように,「日本語を練習する場」や「聴解の練習の場」という1学期開始時にはなかった位置づけが加わるというプロセスを経る学習者もいた。③学習全般(学習スタイル,動機づけ)に関わる場である「学習全般(学習スタイル,動機づけ)に関わる場」という位置づけには,①②の位置づけのいずれかに付随するという傾向が見出された。(B–1)アメリは,①の「友人関係を構築する場」という位置づけに「学習スタイルの拡張の場」という位置づけを付随させていた。(C–1)マリナは,①の「協働学習の場」及び②の「日本語知識・技能獲得の場」という位置づけに「学習意欲が促進される場」という位置づけを付随させていた。また,(C–2)リザは,②「日本語知識を獲得の場」及び「聴解の練習の場」という位置づけに「日本文化に触れる場」という位置づけを付随させていた。学習者の日本語学習の特徴として,次の二点を挙げることができる。①学習者の日本語学習は,大学の日本語授業の位置づけと同様に多様である。②学習者は,様々な形態で「主体的日本語学習」を行っている。以下,学習者の日本語学習に関する二つの特徴に関し,詳述する。①学習者の日本語学習は,大学の日本語授業の位置づけと同様に多様である学習者の日本語学習形態は,各学習者により異なる。さらに,一人ひとりの学習者においても,学習形態は可変的である。「主体的日本語学習」と「授業依存的日本語学習」は,相反する学習形態であるが,一人の学習者において,時期により学習形態のシフトが行われている。例えば,(A–3)イヴは,1学期開始時には「授業依存的日本語学習」を行う傾向があった。しかし,その後,依然として授業を重視しつつも,「主体的日本語学習」に取り組むようになった。また,(C–1)マリナは,1学期開始時より半年の間,「授業依存的日本語学習」と「主体的日本語学習」との間を行き来していた。その後,2学期終了時には「授業依存的日本語学習」を脱却し,「主体的日本語学習」にシフトしようとしていた。一方,(C–2)リザは,前述した(A–3)イヴや(C–1)マリナとは逆に,
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