1学期開始時,マイテにとって,大学の日本語授業は「進級を達成する場」であり,「日本語知1学期開始時,マリナにとって,大学の日本語授業は,「協働学習の場」であった。その後,「日1)日本語授業●30人関係の構築の場」であった。その後,アメリにとって,大学の日本語授業は,クラスメイトとの友人関係に支えられる「安心して日本語が使用できる場」となった。また,アメリは大学の日本語授業内外で一貫して「主体的日本語学習」を継続していた。また,大学の日本語授業内外のリソースを活用し,「主体的日本語学習」に取り組んでいた。さらに,渡日することにより,独自に「日本語使用の場」を確保しようとしていた。B–2 マイテ (女性,10代,2年次)識を獲得する場」であった。また,大学の日本語授業における学習の不足感を解消する場としての授業外環境を活用していた。その後,大学の日本語授業は,マイテにとって,「日本語を練習する場」となった。一方で,マイテは大学の日本語授業内外で一貫して「主体的日本語学習」を継続していた。また,大学の日本語授業内外のリソースを活用し,「主体的日本語学習」に取り組んでいた。C–1 マリナ(女性,20代,3年次)本語技能・知識獲得の場」,「学習意欲が促進される場」という位置づけが加わった。また,マリナは,1学期開始時から「授業依存的日本語学習」と「主体的日本語学習」との間を行き来していた。授業外では仲間との学習を行っていた。2学期終了時には「授業依存的日本語学習」を脱却し,「主体的日本語学習」に取り組もうとしていた。C–2 リザ(女性,20代,3年次)リザにとって,大学の日本語授業は,「口頭表現を行う場」であった。その後,1学期終了時には「日本語知識を獲得する場」,「聴解の練習の場」,「日本文化に触れる場」という位置づけが加わった。また,日本語授業と日本語科の(専門科目を含む)他の授業の対比を行った上で,日本語授業への肯定的評価を行っていた。また,リザは,1学期開始時には,授業内外のリソースを活用し,「主体的日本語学習」に取り組んでいた。しかし,その後,「授業依存的日本語学習」を行うようになった。「主体的日本語学習」から「授業依存的日本語学習」への変化の背景には,将来像と日本語の関連づけの欠如とそれに伴う日本語学習に対する動機づけの欠如があった。そして,2学期終了時には,これまでに学習した日本語の維持を学習目標とするようになった。5-2-4.学習者の「大学の日本語授業の位置づけ」に関するまとめ本項では,5–2–3の表 3で示したサブカテゴリーに即し,1)日本語授業,2)日本語学習という二つの観点より,「学習者は大学の日本語授業をどのように位置づけているか」を示す。学習者一人ひとりの大学の日本語授業の位置づけは,(A)日本・日本語に関連する職に就くことを希望しており,学習目的が明確に示されている記述,(B)日本・日本語に関連する職に就くことを希望しているが,学習目的が明確に示されていない記述,(C)日本・日本語に関連する職に就くことを希望していないことが示されている記述という分類を問わず,非常に多様である。特徴として,次の三点を挙げることができる。①日本語学習の場だけではなく仲間との場でもある。②日本語知識・技能獲得の場/練習の場である。③学習全般(学習スタイル,動機づけ)に関わる場である。以下,大学の日本語授業の位置づけに関する三つの特徴に関し,詳述する。①日本語学習の場だけではなく仲間との場でもある早稲田日本語教育実践研究 第1号/2013/17-35
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