A–3 イヴ(女性,20代,3年次)A–4 ローラ(女性,20代,2年次と3年次同時履修者)B–2 マイテ(女性,10代,2年次)C–1 マリナ(女性,20代,3年次)●26けに,大学の日本語科での「本格的日本語学習の開始」に至った。仏教者であるルカは,1学期開始時より,永平寺での生活,日本語の童話の仏語訳,日本人観光客グループの案内という「将来像と日本語の関連づけ」を行っていた。また,日本語でのコミュニケーションを「中期的学習目標」とし,学習を継続していた。イヴは,「日本語との蓋然的な出会い」により,日本語学習を開始した。その後,「日本のサブカルチャーとの出会い」をきっかけに,クリエーター(ゲームデザイナー,作家)になるという「将来像と日本語の関連づけ」を行った。そして,クリエーターになることを内発的動機づけとして日本語学習を継続した。具体的には,アソシエーション,高校の「授業内での習慣的学習」を行った。イヴは,1学期開始時には「近視眼的目標」として,授業に関連する日本語知識獲得を設定していた。しかし,徐々に授業依存からの脱却を希求するようになり,2学期終了時には「重層的学習目標」を設定するようになった。ローラは,「日本語との蓋然的な出会い」により,日本語学習を開始した。「学習仲間との出会い」により,日本語学習は一過性の活動に終わることなく,継続された。1学期開始時にローラは,日仏翻訳者という「将来像と日本語の関連づけ」を行っていた。しかし,「将来像と日本語の関連づけ」は次第に後退し,JLPT合格という「近視眼的目標」に焦点を当てるようになった。そして,2学期終了時には,「人生中の日本語の位置づけを喪失」し,日本語とは特に関係のない職に就くことを志向するようになった。(B) 日本・日本語に関連する職に就くことを希望しているが,学習目的が明確に示されていない記述B–1 アメリ(女性,20代,2年次)アメリは,「外国語への嗜好」による「日本語との蓋然的な出会い」により,日本語学習を開始した。1学期開始時にアメリは,外国語(フランス語)教師としての日本での就業や日本での生活といった「将来像と日本語の関連づけ」を行っていた。しかし,「将来像と日本語の関連づけ」が「憧れの段階」に留まっていたため,漢字学習,JLPT合格,日本文化の理解や新出語彙の学習といった「近視眼的目標」を設定していた。次第に「将来における日本語学習環境向上への欲求」を抱くようになったが,具体性に乏しく,日本語学習に影響するまでには至らなかった。マイテは,「外国語への嗜好」及び「日本語への嗜好」による「日本語との蓋然的な出会い」により,日本語学習を開始した。1学期開始時にマイテは,翻訳者や日本語教師といった「将来像と日本語の関連づけ」を行っていた。しかし,「将来像と日本語の関連づけ」が「憧れの段階」に留まっていたため,日本語資格や日本語知識の獲得を重視する「近視眼的目標」を設定していた。また,1学期開始時より,口頭表現の上達を希求していたものの,具体性に乏しく,将来像との関連性も明確ではなかった。(C)日本・日本語に関連する職に就くことを希望していないことが示されている記述マリナは,「日本語との蓋然的な出会い」により,日本語学習を開始した。しかし,1学期開始時より,日本語を活かして就職することを志向しておらず,「将来像と日本語との関連づけの欠如」早稲田日本語教育実践研究 第1号/2013/17-35
元のページ ../index.html#30