(a)の観点で「ポートフォリオ」の記述を分析した結果,下記の表3のようなカテゴリー,サブA–1 ジュリ(女性,20代,3年次)●25構成概念日本語との蓋然的な出会い日本語との必然的な出会い将来像と日本語の関連づけ憧れの段階将来像と日本語の関連づけの欠如近視眼的学習目標重層的・中期的学習目標人生中の日本語の位置づけ人生中の日本語の位置づけの喪失自己を構成する一要素=日本語学習者自身の関心・興味から,蓋然的に日本語と出会っている。学習者自身の意図に関わらず,必然的に日本語と出会っている。学習者自身が思い描く将来像と日本語に関連づけがある。学習者自身が思い描く将来像が具体性に乏しく,憧れの段階にある。学習者自身が思い描く将来像と日本語に関連づけが欠如している。学習目標が目先の課題を対象に設定されている。様々なレベルの学習目標が,将来を見据え,設定されている。日本語が学習者の人生における重要な要素として位置づけられている。学習者が人生における日本語の位置づけを喪失している。日本語が学習者の自己を構成する一要素として位置づけられている。定 義山内 薫/フランスの国立大学における日本語ポートフォリオ作成活動表3 「日本語学習と学習者の人生との関わり」に関する概念サブカテゴリーカテゴリー日本語学習の開始将来像と日本語の関連づけ日本語学習と自身の人生との関連性目 標日本語の位置づけ論 文5-2.分析結果本節では,5–1で示した(a)(b)の観点で「ポートフォリオ」の記述を分析した結果を記述する。なお(a)の観点で「ポートフォリオ」の記述を分析した結果に関しては,5–1で示した(A)(B)(C)の分類ごとに示す。 5–2–1.(a)学習者は日本語学習と自身の人生をどのように関わらせているかカテゴリー,構成概念が得られた。表3で示した構成概念を紡ぎ合わせ,記述した個々の学習者のストーリーラインを以下に示す。(A)日本・日本語に関連する職に就くことを希望しており,学習目的が明確に示されている記述ジュリは,高校在学時に「日本語との蓋然的な出会い」により,日本語学習を開始した。大学入学後も,「日本文化・日本人の思考法への理解と深化」を目的に,日本語学習を継続した。1学期開始時より,ジュリは,将来通訳になるために,まずは日本で日本語を使いながら生活してみたいという「将来像と日本語の関連づけ」を行っていた。また,「将来像と日本語の関連づけ」に即した「重層的な学習目標」を設定していた。ジュリは,2学期終了時まで「人生中の日本語の位置づけ」を維持し,1学期開始時に設定した目標達成への志向を持続していた。A–2 ルカ(男性,40代,3年次)ルカは,「日本語との蓋然的な出会い」により,日本語学習を開始した。その後,失業をきっか
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