1)「ポートフォリオ」作成2)「ポートフォリオ」の発表●22標や学習計画を設定している時点)に関する問いを設定した。「これまでとこれから」に関する問いとは,学習歴と学習を始めるきっかけ,学習目標・計画に関する問いである。「今」に関する問いとは,学習時間,学習の方法,得意・不得意に関する問いである。次に,「ある一つの授業における個々の学習者の日本語学習を対象とするポートフォリオ」の側面として,各学習者が教室活動における自身の学びを省察し,フォローアップし,評価できるようなることを目的とし,教室活動における学びの実感を記録するような問い(学期末の感想及び発表の感想)を設定した。フランスの国立大学で学ぶ日本語学習者にとって,日本語に関する教室活動(授業及び授業に関わる予習・復習)は,学期中の日本語学習時間の大半を占める。学習者が自身の日本語学習を省察するためには,主要な日本語学習の場である教室活動における自身の学びの実感をポートフォリオに記録する必要があると判断した。4-1.日本語ポートフォリオ作成活動の概要「ポートフォリオ」作成活動は,2年次及び3年次の在籍生(約130名)を対象とする科目である「言語実践(pratique de la langue)」4)内の活動として,「ポートフォリオ」の作成をとおし,学習者が自らの日本語学習の管理に意識的になり,「日本語学習と自身の人生とのつながり」を考えながら日本語学習に取り組めるようになることを目的とし,実施された。活動は,2010–2011年度(9月〜4月)の1学期開始時,1学期終了時,2学期終了時の計3回4)行われた。活動内容には,以下の二つのフェーズがある。学習者は,「ポートフォリオ」作成をとおし,自身の日本語学習に関し「これまで・今・これから」という観点で,繰り返し考え,記述し,可視化する。学習者は,基本的に自宅で「ポートフォリオ」を作成し,期限までに提出する。1回目は授業時間中に時間を取り,終わらなければ,宿題とした。また,教師は,「ポートフォリオ」を原則的に日本語で作成することを推奨した。日本語の形式の誤りに関しては,日本語の形式ではなく内容が重要であると判断し,教師による訂正は行わなかった。なお,「ポートフォリオ」の作成及び提出は,成績に加点した。学習者は,各自の「ポートフォリオ」の記述内容をふり返り,その一部を,発表用に再構成する。発表の形式や内容は,各学年の登録者数(2年次 82名,3年次43名)に応じ,調整した。2年次生は,口頭試験において,各自の「ポートフォリオ」の一部を活用し,「私の日本語上達法」というテーマで,各自約5分の発表をクラスメイトの前で行った。3年次生は,各自の「ポートフォリオ」中の「日本語上達法」及び「得意・不得意」の項目を活用し,日本語の教科書の作成,あるいは日本語授業のデザイン(選択制)を行った。作成した日本語の教科書,日本語授業のデザインは,一部がクラス内で発表され,その他は,教師に提出された。また,教師が活動を評価するにあたっては,個人あるいはグループにより行われた発表,及び作成された日本語の教科書,日本語授業のデザインのオリジナリティを重視した。早稲田日本語教育実践研究 第1号/2013/17-354.日本語ポートフォリオ作成活動
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