●191年次 2年次 3年次 登録者213 81 46 進級者58 38 24 進級率27.23 %46.91 %52.17 %は,主専攻が日本語となり,日本語,言語学,日本文学や歴史等に関する科目が設置されている。設置科目のうち,日本語科目は,全科目が必修である。学習者には日本語科目を選択する余地がなく,全ての学習者が同一の日本語科目を履修する。以上のような現状の中で,特に学習者の日本語学習の継続に関し,いくつかの問題が発生している。筆者が勤務していた日本学科において,定期的に行われる試験に合格し,順調に進級する学習者は少数である。入学してから学士3年次を修了し,日本学の学士号を取得するまでの間に落第する学習者の比率は,ここ数年8割前後で高止まりしている。2009–2010年度の各年次における学習者の進級状況は,次のとおりであった。このように進級率が低い原因の一つとして,1章で述べた「日本語学習と自身の人生のつながりを省察する機会」の欠如が推測される。多くの日本語学習者が,日本や日本語への漠然とした興味や関心を主な動機づけとし,日本学科に入学し,日本語学習を始める。日本や日本語への興味や関心という動機づけは,内発的動機づけではあるものの,具体性に乏しく,維持することが難しい。そのため,「日本語学習と自身の人生のつながり」を省察する機会がほとんどない学習者は,徐々に日本語学習への動機づけを低下させ,日本語学習から遠ざかるようになる。その結果,進級不可という事態に陥る。さらには日本学の学士号の取得自体をあきらめ,退学・休学,転科,他大学への転校という形で日本語学習を放棄する場合もある。また,仮に在学中の3年間,順調に進級し,日本語学習を継続した学習者であっても,大学を卒業した後,日本語を用いる職業,あるいは日本に関わる職業に就く学習者は,ごくわずかである。学習者は,在学中,自分が何のために日本語を学習し,身につけた日本語を将来,どのように活かすかを省察する機会を与えられていない。そのため,就職活動を行う時期になっても,自身が在学中に身につけた日本語を,職業の選択にどのように活かすかを上手く考えることができないという事態が予想される。また,自分が日本語で何ができるかを省察した経験がないため,就職活動の際,自身の日本語に関し,上手くアピールすることができないという事態も予想される。このような事態が,ほとんどの学習者が日本語を用いる職業,あるいは日本に関わる職業に就かない/就けないという結果を招いていると推測される。以上のような,進級率の低さ,日本語学習の放棄,在学中の日本語学習と卒業後の職業の分断という問題点は,学習者に「日本語学習と自身の人生のつながり」を省察する機会がほとんどないことにより発生すると推測される。そこで,筆者は,多様な日本語学習者がそれぞれに独自の「日本語学習と自身の人生のつながり」を省察する機会の一つとして,「ポートフォリオ」作成活動を行うことにした。山内 薫/フランスの国立大学における日本語ポートフォリオ作成活動表1 学習者の進級状況2009–2010年度論 文
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