●95「10春」に特徴的な事象として,リピーター学生の存在が挙げられる。私たちは,リピーター学「10春」にリピーター学生が登場したことにより,私たちはより確信を持って,「イベント企画古屋憲章,他/クラス担当者の実践観,教室観,教師観はどのように変容したかリピーターの関わりを見て,前回の問題点を踏まえたうえで,このように進めていこうという意識をもって参加している人がいることが,この活動を進めていく原動力になると感じた。このクラスに必要なのは,いかにして活動を進めていくか,動かしていくか,ということに対する強い問題意識なのかもしれない。(100415 TA報告書_コメント)特集 教室中心主義からの解放/寄稿論文生が主体的にクラス活動を進める様子に接し,次のような気づきを得た。4–1–2,4–2–2で述べたように,「09春」,「09秋」において,私たちは,学習者が話し合いを通じて,問題意識を共有することを実践の柱の一つとしていた。ここで言う問題意識と上記の引用中の問題意識では,その内実が異なる。前者の問題意識は,学習者が留学生として大学生活を送る中で感じる様々な違和感をもとに生まれる問題意識,具体的には,自分たち留学生は,大学コミュニティにおいて周辺化されていると認識し,それを問題であると意識することであった。1.で述べたように,私たちは,「イベント企画プロジェクト」を立ち上げる際,日本人学生と話す機会が少ないという留学生の声から,大学コミュニティにおいて留学生が周辺化されており,それが問題であると考えていた。そして,留学生自身も,同様の認識を持っているであろうと考えていた。しかし,4–1–2で述べたように,「09春」,「09秋」を通して,問題意識の共有,すなわち,クラスのメンバーが留学生が大学コミュニティにおいて周辺化されていると認識し,それを問題であると意識することが非常に困難であることが明らかになった。また,4–2–2で述べたように,「09秋」を通して,私たち同様,留学生も大学コミュニティにおける留学生の周辺化を問題であると認識しているであろうという前提に疑いが生じた。そして,私たちは,大学コミュニティにおける留学生の周辺化という担当者の問題意識を,学習者にも共有させようしていたことに気づいた。後者(上記の引用中)の問題意識は,自分たちがイベントを企画し,開催するためにどのように活動を進めていくかという問題を意識することである。自分たちがイベントを企画し,開催するためにどのように活動を進めていくかという問題は,学習者がイベント企画を進める中で必然的に発生する。しかし,発生する問題を自分たちの問題であると意識するためには,クラス活動への主体的参加が不可欠である。リピーター学生は,「09秋」のイベントの企画・開催が上手くいっていなかったと認識し,「09秋」の上手くいかなかった点を改善したいという思いを持ち,主体的に「10春」に参加していた。そのため,「10春」開始当初より,リピーター学生は,自分たちがイベントを企画し,開催するためにどのように活動を進めていくかという問題を自分たちの問題として意識していた。上述したように,「09春」,「09秋」には,私たちは「イベント企画プロジェクト」という実践を,クラスのメンバーが大学コミュニティにおいて留学生が周辺化されているという私たちの問題意識を共有した上で,イベントを企画・開催する活動であると捉えていた。しかし,「10春」において,リピーター学生が主体的にクラス活動を進めていく様子に接し,私たちは,「イベント企画プロジェクト」という実践を,学習者がイベントを企画・開催するという仕事を協働で主体的に遂行する活動であると捉えるようになった。4-3-3.2010年度春学期「イベント企画プロジェクト」の教室観の変容プロジェクト」の教室を当該学期のクラスのメンバーではない学習者をもメンバーとするコミュニ
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