早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●944-3.2010年度春学期「イベント企画プロジェクト」(以下「10春」)4-3-1.実践概要■期間:2010年4月8日〜7月22日(週1コマ=90分×15週)■ クラス参加者:学習者18名(うち2名は「09春」履修者,3名は「09秋」履修者), 日本人学生ボランティア2名,担当者1名,TA1名■クラス活動の流れ:クラス活動開始当初に担当者から次の二つの課題を提示した。①お互いの名前を覚える。②企画グループを作る。①②とも,リピーター学生(再履修者)を中心に実施された。また,クラス活動初期にリピーター学生からの発案により,親睦を目的としたピクニックが行われた。また,「09秋」終了後に行われた担当者によるリフレクションにより,次の二つの問題点が指摘されていた。(1)クラスのメンバーがクラス外に開かれたイベントを企画し,開催するということをイメージするまでにかなりの時間がかかった。(2)クラスのメンバーが発案するイベントの形態と内容に関するアイディアが貧困だった。私たちは, (1)(2)の問題点を踏まえ,クラス活動初期にICC(国際コミュニティセンター)の学生スタッフ6)によるイベント企画の手順に関するレクチャーを実施した。その後,企画グループごとに企画案を検討した上で,企画案をプレゼンテーションした。プレゼンテーション後,投票により,イベント企画を決定した。決定した企画のテーマは「国際恋愛」である。イベント企画決定後,五つの役割班が編成され,イベントの企画,及び準備が進められた。7月3日に行われたイベント,「ハニーは外国人―留学生たちが話す国際恋愛―」には,クラス外の日本人学生,留学生等,十数名の参加があった。イベントは,ゲーム→ビデオ(国際恋愛の際に起こりやすい問題を寸劇風にまとめた作品)視聴1→議論1→ビデオ(留学生等に対する国際恋愛に関するインタビューをまとめた作品)視聴2→議論2,という流れで行われた。4-3-2.2010年度春学期「イベント企画プロジェクト」の実践観の変容私たちは,「10春」のオリエンテーションにおいて,「イベント企画プロジェクト」に関し,次のように説明している。この説明の中で,私たちは,「イベント企画プロジェクト」においては,主体的な参加(「この授業で一番大切なのは,積極的に参加すること。」)と協働(「みんなで協力して,イベントを企画・開催する」)が重要であることを強調している。このような説明を行う背景には,「09春」を対象とする研究(古賀・三代・古屋2010a)があったと推測される。古賀・三代・古屋(2010a)において,私たちは,クラス活動への「主体的参加」がコミュニティのメンバーとしての当事者意識の共有とクラス活動を行うために協働しようという協働意識の共有により実現するという気づきを得た。「10春」冒頭に行われた説明には,この主体的参加を支える当事者意識の共有と協働意識の共有という気づきが踏まえられている。早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/85-105古屋:普通の授業であれば,授業の時間だけ教室に来て,教室で座っていればいい。しかし,この授業は違う。イベントは,授業外の時間で行われる。また,授業外の時間にイベントの準備をすることもある。この授業で一番大切なのは,積極的に参加すること。積極的に参加しなければ,この授業を取っても,何も得られない。だから,先生に何かを教えてもらいたいという人には,この授業は向いていないと思う。しかし,みんなで協力して,イベントを企画・実施するのは,何だか楽しそうだと思う人にはいいかもしれない。(100408 授業記録_授業内容)

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