早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●93約30人のメンバーで話し合いを進めていくのは,困難が予想される。イベント自体も全員で一つのイベントをやれるのかどうか。話し合いがどのような展開になるかわからないが,ある程度方策を検討しておいて,場合によってはこういう方法もあるという提案を行ったほうがいいかもしれない。(091015授業記録_コメント)古屋憲章,他/クラス担当者の実践観,教室観,教師観はどのように変容したかどの程度話し合いに介入するのか(しないのか),判断が難しい。待っていれば,学生のほうから意見が出てくることもあるので,どのタイミングでするかも難しい。(091015授業記録_ミーティング)問題意識にもとづく目的を共有しなければ,単に一緒に何かをするだけでは関係は生まれないのではないか。来期に向け,どうクラス内で問題意識を共有していくか,考える必要がある。具体的には,こういう問題意識を持った人,という集め方をするか,問題意識を掘り起こすことに時間をかけるか,ということが考えられる。(091217授業記録_ミーティング)最初は,担当者主導で最初にグループ分けして企画案を立てさせるようにしたほうがいいかもしれない。ただ,そうすればうまく進むかもしれないが,それがいいかというと,そうとも言えない。(091126授業記録_ミーティング)特集 教室中心主義からの解放/寄稿論文掘り下げていくことが重要であるという考えがある。この考えに基づき,ここでは「09春」同様,クラス活動の目的に即した軌道修正を行う役割を担っている。しかし,同時に介入するか否かについての葛藤も引き続き抱えていた。ただし,軌道修正につながるような介入は,「09春」に比べると,かなり減っていた。それは,討論会に対する誤解の解消,リーダーによるクラス活動の進行,イベントのテーマに再考を要するような問題がなかったこと等の理由による。直接的な関与・介入を伴わない行動としてのクラス活動の内容の検討も,リーダーがあらかじめその日の予定を考え,クラスのメンバーに周知していたため,ほとんど行っていない。代わりに,執行部を設置したものの,大人数での話し合いはなかなかうまく進まなかったことから,私たちは主に問題解消に向けた関与・介入,及び仕掛けの検討を行っている。また,問題意識の共有への強いこだわりに基づく関与・介入,及び仕掛けの検討も行っている。私たちは,問題解消を図るのは担当者の役割という認識のもと,上記のような仕掛けの検討を行う一方で,スムーズにいくよう担当者がレールを敷くことは,学習者が主体的にクラス活動を進めていくことと相反するのではないかという懸念を抱く。以上述べたように,私たちは,「09秋」においても,「09春」と同様,「イベント企画プロジェクト」において担当者はクラス活動の見守り役であると同時に,環境整備,注意・確認・アドバイス,クラス活動の方向づけ,軌道修正,問題解消を行う役割を担う存在であると捉えていた。加えて,2学期にわたる実践の中から,学習者が問題意識を共有することや大人数での話し合いをまとめていくことは困難であるという問題点が見えてきたことから,問題解消のためには,何らかの仕掛けを施す必要があり,最初はある程度担当者主導で進めたほうがいいと考えるようになった。しかし,あらかじめ問題解消のための対策を組み込み,クラス活動がうまく進むようにする行為は,学習者が問題にぶつかるたびに自分たちで乗り越えていくことを重視する考えと矛盾する。私たちはその矛盾と対峙しながら,「イベント企画プロジェクト」における担当者の役割を模索していた。

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