早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●92早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/85-105Dグループで出た,一つの団体と継続的に交流していくという案や,毎回授業に参加してくれる人を募って,授業内で一緒に何かをやり,最後に大きなイベントを実施する,という案はおもしろいと思った。今回は,時間的に無理だが,検討の余地はあるかもしれない。(091119授業記録_コメント)参加募集,およびイベント後,参加者とのゆるやかなつながりを継続させていくツールとして,mixi(またはFacebook)を利用するといいのではないか。前学期に参加した学生にも参加してもらえるし,今後も継続的に活用していくことで,様々なつながりをつくっていくことができる。(091203授業記録_ミーティング)料理を食べる会をやるとしたら,自分たちで料理を作るかどうかという話になっていったが,三代さんより,何をするかを早急に決めるのではなく,もっと「交流」のあり方などをゆっくり話し合ったらどうかという提案がなされる。(091015授業記録_授業内容)以上のように,「09秋」には,「イベント企画プロジェクト」の目的をイベントの企画・開催へと転換したものの,私たちは引き続き問題意識の共有をクラス活動の出発点と考えていた。しかし,大学コミュニティにおける留学生の周辺化という私たちの問題意識そのものを問い直す必要があるのではないかという認識に至り,私たちは,「イベント企画プロジェクト」をどのような場と捉えるかを再考し始めた。4-2-3.2009年度秋学期「イベント企画プロジェクト」の教室観の変容「09秋」も「09春」に引き続き,私たちは「イベント企画プロジェクト」の教室をコミュニティと捉えていた。加えて,「イベント企画プロジェクト」の教室を空間的に拡張する可能性を持つコミュニティとして捉えるという着想を得た。具体的には,クラス外のコミュニティとつながったり,クラス外の参加者とのつながりが継続されたりするようなコミュニティである。このような着想は,一つのグループから出された企画案がきっかけとなって得られた。さらに,「イベント企画プロジェクト」の教室を時間的な広がりを持ったコミュニティとして捉えるという着想をも得た。具体的には,過去にイベントに参加した人や「イベント企画プロジェクト」のメンバーだった学習者とのつながりが継続されるようなコミュニティである。以上のように,「09春」同様「09秋」において,私たちは「イベント企画プロジェクト」の教室をコミュニティと捉えていた。それがさらに発展し,「イベント企画プロジェクト」の教室を時間的な広がりを持ち,空間的に拡張する可能性を持つコミュニティとして捉えるという着想を得た。4-2-4.2009年度秋学期「イベント企画プロジェクト」における教師観の変容私たちは「09秋」においても,基本的には見守り役というスタンスで臨みつつ,関与・介入も行っている。関与には,クラス活動時やイベント時に必要な備品の準備,イベントを行う際の注意・確認,リーダーへのアドバイスや励まし,学習者からの質問に答える形での意見の表明,担当者主導による振り返りの実施などが挙げられる。つまり,「09春」にも見出されたクラス活動の活性化や遂行のための環境整備,注意・確認・アドバイス,クラス活動の方向づけを行う役割を担う存在として,私たちはクラス活動に関わっていた。介入については,例えば,次のような話し合いの方向性を変えるような提案を行っている。この提案の根底には,具体的なイベント内容を検討する前に,まずは交流に対する問題意識を

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