早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●91「09春」には毎週司会者が交代したことにより,議論を積み上げていくことが困難になるという「09春」には,討論会ということばからディベートをイメージする学習者がいたことがクラス活4-2.2009年度秋学期「イベント企画プロジェクト」(以下「09秋」)4-2-1.実践概要■期間:2009年10月1日〜2010年1月28日(週1コマ=90分×15週)■クラス参加者: 学習者26名(うち2名は「09春」履修者)日本人学生ボランティア4名,留学生ボランティア1名(「09春」履修者),担当者1名,TA1名■クラス活動の流れ:問題が生じたことから,「09秋」には執行部の設置を提案した。その結果,リーダー1名,補佐2名が選出され,以後リーダーが中心となってクラス活動が進められた。また,「09春」には問題意識を共有してイベントのテーマを考えることが困難であったことから,「09秋」にはあらかじめ交流をメインテーマとして設定した。話し合いでは,交流の目的や交流によって何が得られるかについて検討がなされ,イベントの目的は次の二つに絞られた。①外国人に対する先入観を壊す。②イベントを通して形成された良い関係を持ち続けられるようにする。そして,①②の目的に照らし,イベント参加者と料理を作ることが決定した。その後具体的な内容が検討され,三つの役割班に分かれて準備が進められた。1月16日に行われたイベント,「作ろう!食べよう!―国際料理で楽しめる交流会―」には,クラス外の日本人学生,留学生等十数名の参加があった。イベントは,ゲーム→料理(クラスのメンバーが準備した餃子の具を一緒に包む)→歓談しながら食事→クラスのメンバーが作ったお好み焼き・焼きそばを食べながらのゲーム,という流れで行われた。4-2-2.2009年度秋学期「イベント企画プロジェクト」の実践観の変容動の方向性に大きく影響した。そのため,「09秋」は,討論会ではなく,クラスの外に開かれたイベントを企画・実施することをクラス活動の目的として掲げた。この時点で,私たちの「イベント企画プロジェクト」の実践は,問題解決に向けた討論会の実施からイベントの実施へと,クラス活動の目的を大きく転換した。しかし,上述の「イベントの企画・実施を通して自分の『交流』を振り返り,考えていくこと」という中には,交流に関する問題を解決するという意図が含まれている。従って,交流に対する学習者の問題意識が出発点となる。つまり,私たちは問題意識を共有するところからイベントのテーマや目的を考えるという点を引き続き重視していたのである。しかし,元々全員が交流に興味・関心や問題意識を抱いて参加しているわけではないため,問題意識を共有することはやはり困難であった。一方で,学習者が大学生活において問題を抱えているという私たちの問題意識自体への疑問も生じ,「イベント企画プロジェクト」をどのような場として捉えるかという点を改めて問い直す必要性が出てきた。古屋憲章,他/クラス担当者の実践観,教室観,教師観はどのように変容したか「交流」をメインテーマとして,クラス外の人を交えたイベントを企画・実施すること,イベントの企画実施を通して,自分の「交流」を振り返り,考えていくことを確認。(091015授業記録_授業内容)そもそもこの授業の出発点には,留学生が周辺化されているという我々の問題意識があったが,本当にそうなのだろうか。我々自身が,再度何を目的にどのようなことを行なっていくのか,もう一度考える必要がある。(091217授業記録_ミーティング)特集 教室中心主義からの解放/寄稿論文

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