●866学期目の実践が行われている。2.本研究に至る経緯と本研究の目的3.分析方法早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/85-105のではないか。以上のような問題意識をもとに,私たちは新たな実践を立ち上げることにした。実践を立ち上げるにあたり,まず,次の二点を実践の中心に置くことを決めた。①学習者が話し合いを通じて,問題意識を共有する。②協働で一つの活動を行う。そして,①②を中心に「イベント企画プロジェクト」という実践をデザインした。「イベント企画プロジェクト」は,クラス内,あるいは学内だけではなく,広く外部に開かれたオープンなイベントをクラスのメンバーである学習者が全て自分たちで企画・開催するという実践である。「イベント企画プロジェクト」の目的は,次の二点である。(1)自分たちが大学生活を送る中で感じている問題をクラスのメンバーで共有し,共有された問題を解決するための話し合いの場として,イベントを企画する。(2)クラスのメンバーと協働でイベントを企画・開催する経験を通し,学びを形成する。上述したような過程を経て,私たちは2009年度春学期にセンター設置のテーマ科目として「イベント企画プロジェクト2)6–83)」を立ち上げ,実践を開始した。以後,「イベント企画プロジェクト」は,実践の計画,実行と観察,リフレクション,(リフレクションに基づく)実践の再計画というサイクルによるアクションリサーチ4)として継続的に実施されている。2011年度秋学期現在,私たちはこれまで「イベント企画プロジェクト」の実践のうち,主に1学期目から3学期目の実践を対象とする研究を行ってきた(古賀・三代・古屋2010a,古賀・三代・古屋2010b,古賀・三代・古屋2010c,古屋・古賀・三代2011)。一連の研究においては,「イベント企画プロジェクト」を一つの実践共同体と捉え,実践共同体の変容,及び実践共同体が変容する中で学習者が実感した学びに関し,記述してきた。上述したような研究は,私たちにとって「イベント企画プロジェクト」という実践への理解を深める営みであると同時に,その時期その時期の自分たちの言動や意識をふり返るリフレクションともなっていた。リフレクションを重ねる中で,私たちは,「イベント企画プロジェクト」立ち上げ当初に抱いていた「イベント企画プロジェクト」とはこのような実践で,「イベント企画プロジェクト」の教室はこのような場所で,担当者は「イベント企画プロジェクト」においてこのような役割を担うべきであるという考え,つまり,「イベント企画プロジェクト」の実践観,「イベント企画プロジェクト」の教室観,「イベント企画プロジェクト」における教師観が変容していくのを実感するようになった。そこで,本研究では,私たちの「イベント企画プロジェクト」の実践観,「イベント企画プロジェクト」の教室観,「イベント企画プロジェクト」における教師観が変容する過程を描く。本研究の目的は,私たちの「イベント企画プロジェクト」に関する価値観が変容する過程から,日本語教師のリフレクションに関する何らかの示唆を得ることである。分析資料は,2009年度春学期から2011年度春学期までの5学期分の授業記録,及びTA報告書である。授業記録は,毎週授業後に担当者が執筆した。授業記録に記載されている内容は,その日
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