早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●798 参加者が他者に問いかけない理由熊田道子/「自由読書」特集 教室中心主義からの解放/寄稿論文じている9)。7–1–5  アンケート8「一人で本を読む(「自由読書」)のと,みんなで読む(「一般に行われている読解クラス活動」)のと,それぞれ良い点は何か」(自由記述及びインタビュー)〔「自由読書」の良い点〕〔非漢字圏参加者〕①たくさん色々な本がある(2) ②好きな本が読める(5) ③自由に自分のスピードで読める(5) ④自由に何でも本をゆっくり読む方がいい(2)  ⑤リラックスして読める(3) ⑥私のレベルが読める(4) ⑦自分で読み方を選べる(3) ⑧自分の自由な時間がある(3) ⑨読むことに集中できる(3) ⑩自分で学べる・自分だけで考える・他の人に邪魔されない(8) ⑪力がつく(2) ⑫必要なとき手伝ってもらえる(質問が聞ける。教えてもらえる)〔漢字圏参加者〕①たくさん色々な本がある(2)②好きな本が読める(2) ③自由に自分のスピードで読める(4) ⑥私のレベルが読める(2) ⑧自分の自由な時間がある(2) ⑩自分で学べる・自分だけで考える・他の人に邪魔されない(2) ⑬みんなが違う本を読んで内容を紹介すれば,次のクラスで本が選びやすい(2)〔「一般に行われている読解クラス活動」の良い点〕〔非漢字圏参加者〕①わからないとき,みんなが質問するので,わかる(3)  ②先生から知識を教えてもらい,それと自分の考えが一緒になる。(2)〔漢字圏参加者〕②先生から知識を教えてもらい,それと自分の考えが一緒になる。(5)「自由読書」の良い点として多く挙げられたのは,「読むもの(内容・レベル),読み方,読むスピードなどが自由である」「必要なとき,手伝ってもらえる」「自分だけで文章と向き合い,時間や他の人(他の人とは,他の参加者,教師を指す)に煩わされることなく,内容,構造,語彙,文法などを深く読み込んでいける」という点であった。7-2  アンケート5–8 及びフォローアップインタビューのまとめ多くの参加者が,学期始めと比べ,読みが好きになると同時に,読みの能力が向上したと感じている。特に,非漢字圏の参加者は読みへの不安が軽減されたことを述べた。また,個人ではなく,クラス活動の中で読むことで,わからないところは教師や周囲に聞けるという安心感があったということも挙げられていた。この結果から,自らが好きな文章を対象として,自分なりの読みの方法を試行錯誤しながら身につけるうちに,読みの楽しさ,読むことへの自信を知ると同時に,経験を積むことで読解力も向上したと思われる。本クラスでは,自分のレベルよりも高いものを読んでいる参加者が多く,また「自由読書」の良い点として,「必要なとき,手伝ってもらえる」点を挙げている参加者が多かった。それにもかかわらず,参加者達からの質問は比較的少なかった。90分の間,一度も質問をすることなく終える参加者も少なくなかった。その理由についての,アンケート及びインタビューの結果は,以下のとおりである。

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