●6早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/4-6る可能性を持っている。川名・小西・齋藤・坂田・佐藤・田所・田中・水上・宮武・渡部論文は,早稲田大学日本語教育研究センターの初級前半クラスで行われた「日本語かきこ」活動(学生が自分に関することを電子掲示板に日本語で書き込む活動)における教師の取り組みを対象とする実践研究である。「日本語かきこ」活動は,同じレベルの九つのクラスで一斉に実施された。「日本語かきこ」活動を媒介に,教師間の連携が促進され,教師間の連携が互いの実践を改善するという相乗作用=教師間シナジーを生んだ。「日本語かきこ」活動は,教師が教室で学習者に教授するタイプの実践ではない。そのため,開始当初,担当教師たちに様々な戸惑いが生じた。しかし,教師間の連携をとおして,戸惑いが解消され,最終的には教師間シナジーの形成へとつながった。このような教師間の連携から教師間シナジー形成へと至るプロセスは,教師が教室中心主義から解放されるために必要な環境に関し,示唆を与える。はじめに述べたように,教室中心主義から,日本語学習者を解放していくためには,留学生の教育や支援に関わる者の教育観・教師観・授業観の変革が不可欠である。本特集が読者諸賢の教育観・教師観・授業観を問い直す一つの機会となれば幸いである。
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