●733 対象者,及び,分析データの概要4 「好きなスタイルで・自分のペースで 本を読む」学期開始時における本クラス選択理由,及び読みに対する参加者意識熊田道子/「自由読書」特集 教室中心主義からの解放/寄稿論文要素の存在を前提にすれば読むものの選択が個々の読み手に譲与されないことは当然である。なぜなら,「読むもの」の選択を個人個人に委ねたとき,「教えられる内容」は個々別々となり,クラス活動を支えている三要素のバランスが崩壊してしまうからである。本クラス活動は,読む行為が個人のものであるがゆえに,「一斉に同じこと・同じものを」教室活動で極力行わず,個々の参加者が自らの力で読みの世界を形成していくことを目的としている。そして,読む行為を個人のものとするために,授業の中から,「一斉」という要素をできるだけ取り除き,「教える者」「教えられる者」「教えられる内容」という教室活動における三要素をできるだけなくす授業を試みるものである。以下,本授業の名称を「好きなスタイルで・自分のペースで 本を読む」3)とし,このような形態の授業の総称を「自由読書」とする4)。本稿では,「好きなスタイルで・自分のペースで 本を読む」のクラス参加者へのアンケート及びフォローアップインタビューの結果を中心として論を進める。当該クラスでは,学期の開始時と中盤以降に参加者にアンケートを取り,その後,アンケートの答えに関するフォローアップインタビューを行っている。本クラスに参加した参加者のうち,アンケートの対象となったのは,本大学の日本語センターにおいて,初級後半から初中級レベルと判定された者のうち,学期開始時と学期中盤のアンケートに回答した48名である。国籍は,アメリカ・イギリス・イタリア・インド・ウズベキスタン・エストニア・韓国・シンガポール・ドイツ・スウェーデン・台湾・中国・デンマーク・ニュージーランド・ノルウェー・フランス・フィリピン・メキシコと多岐にわたっている。このうち,非漢字圏の参加者は34名,漢字圏の参加者は14名である。所属は別科・学部・大学院(科目等履修生を含む)等様々で専門も異なっている。「自由読書」を行ったのは,授業期間全15週のうち,オリエンテーションと学期末を除いた11週間である。以下,アンケート・及びフォローアップインタビュー(以下インタビューと略す)の結果は,内容をまとめるため,必要に応じて筆者が表現を簡略化し,意味的に同じだと思われるものは一つとした。なお,クラスには漢字圏非漢字圏の参加者が混在しているが,本稿では,非漢字圏参加者の意識の変遷に焦点をあてていることから,非漢字圏参加者のコメントを中心に採り上げている。4-1-1 アンケート結果1「本クラスを選択した理由」(自由記述及びインタビュー)(*○は回答の番号を,( )は回答数を示す)回答のうち,有効なものを以下に示す。〔非漢字圏参加者〕①「日本語を読むことが苦手だったので,もう少し上手になりたかった」(5) ②「日本語で読むのが上手ではないから,練習をしたかった(10)」 ③「読むレベルを上げたい/自分の文章を読む
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