●51⑤WEBを活用した支援記録の共有,悩みや問題点の共有守谷智美,他/留学生支援システムにおける行動指針とスタッフ・ディベロプメントに関する検討特集 教室中心主義からの解放/基幹論文について説明をしたりする初めての機会となった。例えば,支援スタッフから,「情報の共有のためにオンライン上の掲示板やメーリングリストを使用したい」という要望が多く挙がっていたが,それは個人情報保護の観点から難しいなどの事情を伝えたり,教職員スタッフが活動開始当初に伝えた支援システムの理念である「自律学習」が支援スタッフに思った以上に理解,共有されていないという事実を知ったりする機会となった。支援スタッフの中には,自律学習をどう捉えてよいのかわからず,学習者への対応に悩んだという声も多く聞かれ,当日の話し合いの中でも,複数のグループで議題として取り上げられていた。これらの問題は,いずれも双方の「わかっているはず」「理解されているはず」という思いこみから生じているものであろう。また,支援システム立ち上げから間もないことから,全てのことが完成されていない段階で試験的にシステムを運用していることから生じている問題とも言える。しかし,今回,事例検討会の場で直接顔を合わせ,双方の思いを共有することで,お互いの考えや要望,また目指しているものを改めて知る機会となったと言えよう。それが以後の支援システムの具体的な改善へと繋がっていくこととなった。一方,支援スタッフ同士の共有は,当日の話し合いとアンケートのいずれにおいても,その重要性が強く認識されていた。話し合いの活動では,自分が支援をする中でぶつかった悩みや問題,疑問点,また,それらに対して自分が行った支援について,支援スタッフ間でざっくばらんに話をすることにより,自分が行ってきた支援を改めて見つめ直したり,新しい気づきが生まれたりする様子が見られた。特に,「自律学習」の捉え方をめぐっては,それぞれが悩み,苦労しながら支援を行っていたことがわかった。このような話し合いの場が設けられるのは初めてのことであり,支援スタッフが,話し合いの場でそれぞれが実際に経験した事例を語り合うことで,「わたしもそう思っていた」「同じ悩みを抱えていた」などの共感が生じ,その共感を基にして連帯感が育まれていったと考えられる。また,このような共感や共有の体験が多くの支援スタッフの安心感にも繋がったことがアンケートの記述からも明らかになっている。さらに,スタッフ同士の連帯感と連携をより強固なものとしていくために,報告書のデジタル化や支援スタッフの曜日固定,共有ノートの設置など,様々な改善策が支援スタッフから提案された。以上から,「情報の共有を図る」という目標は,教職員スタッフと支援スタッフの間,支援スタッフ同士の双方において共有の必要性や意義が改めて認識されたとともに,今後,共有をさらに継続的で強固なものにしていくために,多くの改善の可能性が見出せたという成果があったと言えよう。3.5.2 事例検討会が支援システムにもたらした様々な「改善」最後に,今回の事例検討会を経て,支援システムにもたらされた改善点について述べておきたい。事例検討会での議論をきっかけとして,2011年秋より実際に変更された点は,以下の6点である。①支援システムの名称変更②活動場所の固定③支援スタッフの曜日固定と曜日リーダー制の導入④リーダーミーティングの導入⑥オブザーバーとしてのボランティア制度の導入
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