●49守谷智美,他/留学生支援システムにおける行動指針とスタッフ・ディベロプメントに関する検討特集 教室中心主義からの解放/基幹論文一方,「共感」という言葉は,「自分の持っている事例や悩み,問題,気づきは,他のスタッフも持っているものだということがわかった」など,自分と同じ気持ちを持っていたスタッフに出会えた場合に使われており,単に事例を「共有」するだけでなく,「同じ気持ち・悩みを持っている」場合を指していると考えられる。「共感」について述べたコメントの中には,「安心した」「刺激になった」という感想が見られた。このように「共感」という言葉を使用したものは,「同じ気持ちや悩みを持っているスタッフがいた」という内容への言及を含め,ほぼ半数の支援スタッフの回答に見られた。「共感」「共有」以外の感想として,数は少なかったものの,1学期間を通した各自の取り組みを振り返る機会になったことへの評価や,支援システム全体に関わる人数の多さへの驚きの声など,自らの支援のあり方を振り返ったり支援システム全体を見渡したりする機会が学期中にはなかったことを示唆するコメントが見られた。3.4.2 質問2 2011年度春学期の支援システム全体への回答2つ目の質問項目は,「今学期,チュートリアルスタッフとして関わってみてどうでしたか」というものであり,下位項目として「よかったこと・得たことなど」「大変だったことなど」「チュートリアルの運営面での改善点」の3つの回答欄が設けられていた。この質問は,事例検討会についての感想を直接的に求めるものではない。しかし,質問1でも事例検討会を「1学期間の振り返りや整理の機会」と捉える回答があったこと,事例検討会の直後に行ったアンケートへの回答であることから,事例検討会及びその事前課題を通しての各スタッフのコメントと考え,ここに記述する。まず,「よかったこと」については,「学習者と触れ合えた」「支援者としての経験ができた」「学習者が問題と考えていることがわかった」など,日本語学習者と「支援者」の立場で向き合う経験をできたことを評価する言及が多かった。その他に,支援の方法や学習ストラテジー,「自律学習」という理念そのものについて考えるチャンスになったという自分自身の学びについての感想も見られた。一方,「大変だったこと」としては,自分の支援のやり方についての迷いや,「教える場」ではない支援のあり方,チュートリアルの範囲外の相談を持ち込む相談者への戸惑いが挙げられ,その他として「相談者に対してスタッフが足りない場合にどうしたらいいか」という疑問や報告書の書き方に関するコメントなど,運営面に関わる内容が多く見られた。最後の「運営面での改善点」については,「支援スタッフの曜日固定」「報告書のデジタル化」「スタッフ間の連携」「事例検討会の回数を増やす」など,支援スタッフが情報を共有することを重視する改善案が数多く上がった。他に,名札や辞書など,支援の際に必要なものに対する要望があり,支援スタッフが支援システムの運営に関して主体的,具体的に考えている様子が窺えた。また,教員スタッフに対しては,より具体的な管理・指示を求めるなど,積極的な関与を望む声があった。以上のアンケート結果を総合すると,今回の事例検討会に参加した支援スタッフは,「お互いに連携しながら」「情報や経験を共有していく」「時には,解決に至らないとしても,同じように悩んでいる人がいることで安心する」場として事例検討会を捉え,また,日頃支援スタッフとしての体験を振り返って整理し,疑問点や改善案を洗い出す機会としている様子が窺えた。継続的・主体的
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