早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●48早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/39-54どういうことか?/スタッフ間の連携をどうするか?/報告書のあり方/学部や研究科,サークルなどの情報収集蓄積表3 各グループから出されたキーワードグループ1自律学習/学習ストラテジー/スタッフ固定グループ2チュートリアル全体の目的と学習者のニーズのズレ/自律学習に導くとはグループ3教師の教育観(学習観も?)と学習者の学習観のズレグループ4居場所としてのチュートリアル/チューター同士の横のつながり,情報共有や悩みを分かち合える時間としてこの事例検討会を有効に使いたい,今後よりよい支援ができるようになりたい,という前向きな気持ちで臨んでいた様子が窺えたことは,この会が「支援スタッフが自分で経験した事例を自分自身で話し,他者と共有できるようにすること」を最優先し運営されたことによるものだと言えよう。3.4 支援スタッフにとっての事例検討会−アンケートの回答から−3.3までで述べたように,事例検討会は,継続的・主体的に関わるスタッフを育成することと,情報の共有を図ることを主目的として準備,実施された。それでは,参加した支援スタッフは事例検討会をどのように受け止めたのだろうか。支援スタッフからのフィードバックを得るため,事例検討会の最後に,参加者(見学者を含む)にアンケート用紙を配布した(詳細は「資料」参照のこと)。後日アンケートを依頼した欠席者を含め,17名から回答を得た。本節では,このアンケートの回答のうち,見学者・欠席者を除いた15名分を対象とし,自由記述の回答から,多くの参加者に共通して見られたキーワードを抜き出し,参加者が事例検討会をどのように捉えていたかを探る。3.4.1 質問1 事例検討会へのコメントアンケートの1つ目の質問は,「事例検討会を通して感じたこと,考えたことを聞かせてください」というものであった。この質問は,この事例検討会そのものに対する感想を求めたものである。回答の中で特に目立ったキーワードとして「共有」及び「共感」があった。「共有」というキーワードに関わる内容を詳細に見てみると,グループの中で1人の経験や気づきを他のメンバーに話し,対応について話し合ったり,そのような問題点があることを全員が認識したりしたという経験を指していることがわかった。1人では対応策が思いつかないことに対してグループの他のメンバーから意見をもらえる,他の人の事例が参考になる,といった直接的なメリットの他,単に「話すことですっきりした」という感想もあり,「共有が大切だ」という評価をしている回答もあった。なお,この「共有」の範囲は多くの場合には支援スタッフ同士のものであったが,教職員スタッフと近しく話し合い,相談したり,改善を提案したりする機会として事例検討会を評価するコメントや,日本語センターおよび日本語教育研究科全体を含めた「共有」を望むコメントも見られた。支援システム全体,または事例検討会のあり方へのコメントとしては,他にも問題点の指摘や提案が何点か挙げられていたが,この点については質問項目2の回答とも重なるため,次節に詳述する。

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