早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●45守谷智美,他/留学生支援システムにおける行動指針とスタッフ・ディベロプメントに関する検討特集 教室中心主義からの解放/基幹論文事例を挙げるよう,メーリングリスト(以下,ML)を通して周知した。具体的には「毎回のチュートリアルで様々な学生のニーズに対応している中で,うまい対応ができたという手ごたえがあったことや,反対に対応があまり上手くいかなかったこと,実際にこのような対応でよかったのかと気になっていること,対応の仕方が全くわからなかったことといった様々な思いや考えを事例として出してほしい」と知らせた。提出された事例については,支援スタッフのみならず,教職員スタッフも含め事例への対応を考えていくことを特記した。なお,事例検討会の出席は,チュートリアルと同等に給与が支給されることも周知した。支援スタッフからは様々な事例が生の声として寄せられたが,それらを分類する際,提出された事例のどの部分が支援に当たった本人にとって重要なのか,最も訴えたい点は何なのか,その事例の核心を読み取ることに配慮した。筆者らで検討後,同様の核心部分を持つと思われる事例については,事例検討会当日同グループで話し合うことができるようにし,人数が多くなった場合はグループを2つに分けた。以下はグループと分類された事例内容についてである。グループ1: 自律学習へのつなげ方(具体的な問題の解決のみ求めてくる学習者をどうやって自律学習へ導くのか)グループ2:同上グループ3:ビリーフの強い学習者(表面化している問題だけではなさそうなケース)グループ4:チューター教室とは(教える場ではないチュートリアル教室とは何か)また,支援スタッフから挙げられた事例の中には,上記の事例内容以外のものも含まれていた。例えば,支援スタッフより相談者が多く来た場合や,終了時間が過ぎても相談者がいる場合の対応である。これらは,検討事例としては取り上げず,教職員スタッフから回答することにした。グループ決定後,支援スタッフに事例検討会の決定に関する連絡をMLに配信した。事例検討会実施日は,アドバイジング班や支援スタッフが出席しやすい日時を優先した。支援スタッフには,分類した事例のシートを添付し,自身のグループの事例を事前に読んでくることを提案した。教職員スタッフに対しては,詳細の決定の後,事例検討会に関する連絡をメールし,参加を呼びかけた。当日の進行にあたっては,会を二部に分けた。パート1では支援スタッフからこれまでに出されていた運営上の疑問点や,支援スタッフとも共有しておく必要事項についての回答を教員から手短に行い,パート2ではグループ内で時間をかけて事例を検討できるよう設定した。また,当日に実施するアンケートを作成し,このアンケート回答の提出までを支援スタッフの当日の業務とした。なお,今回の事例検討会では,チュートリアルに関心のある院生もオブザーバーとして参加が可能である旨を支援スタッフのMLのみで周知した。これは,今回の事例検討会は,支援スタッフ間での事例の検討と共有に主眼を置いているため,誰でも参加できることで支援スタッフが話しにくい状況になることは回避したいというアドバイジング班の考えによるものである。3.2.3 事例検討会の実際の流れ当日の事例検討会では,支援スタッフ16名のうち15名,事例検討会の運営を主として担当するアドバイジング班の教職員スタッフ6名,支援システムを支える教職員スタッフ10名が参加した。また,チュートリアルに関心のある院生1名も見学者として参加した。事例検討会では,まず,会

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