早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●391.はじめに日本語センターにおける留学生支援システムの展開と今後の構想要旨守谷智美,他/留学生支援システムにおける行動指針とスタッフ・ディベロプメントに関する検討本稿では,日本語学習支援を基軸とした本学の留学生支援システムにおける行動指針と支援スタッフ育成に関する検討・報告を行う。支援の際の行動指針に関しては,コミュニティ心理学の基本理念や,ピア・サポート等を活用した留学生支援の先行事例等から,本学のシステムに必要かつ有効であると考えられる点を採り入れることとした。また,スタッフ・ディベロプメントの一環として行った事例検討会では,継続的・主体的に関わる支援スタッフの育成とスタッフ・教員間での情報共有を主な目的とした。出席者からは対応事例に基づき支援のための様々な提案が見られるなど一定の成果が得られたが,一方で理念の共有の難しさなど課題も明らかになった。支援システムを留学生が安心して利用できる場所にするには,支援スタッフの存在が大きい。そのため,今後も行動指針の更なる検討・修正とスタッフ育成を継続しつつ,共に留学生支援コミュニティを作っていきたい。キーワード:行動指針,スタッフ・ディベロプメント,事例検討会, コミュニティ心理学,ピア・サポート特集 教室中心主義からの解放/基幹論文守谷 智美・尾関  史・坂田 麗子・田中 敦子 福池 秋水・小高 葉子基幹論文The conduct guidelines and staff development in the Support System for International Students日本の大学で学ぶ留学生が充実した学生生活を送り,一人ひとりが安心して自律的な学びを深めていけるような環境を創出していくためには,授業の場だけではなく,授業外の日本語学習面での支援も重要な支援の一つであると位置づけられる。このような基本理念のもと,早稲田大学日本語教育研究センターでは2011年度より日本語学習支援を基軸とした留学生支援システム(以下,「支援システム」)が本格的に始動となった。これは,留学生支援の場である「日本語チュートリアル」(以下,チュートリアル)1)において,日本語教育研究科に在籍する院生が支援スタッフとして来室する留学生への支援を行い,それを教職員スタッフが支え,指導・助言を行うものである。このような支援の場では,教員・職員・院生他,留学生を取り巻く多くの人々が支援者として関わり,運営を支えるため,実際の支援の際の行動指針が共有されると同時に,それらのもとに支援に当たることのできる支援スタッフの育成が重要な鍵を握ると考えられる。筆者ら6名は,本システムにおける支援の際の行動指針の検討と支援スタッフの育成を目的としたワーキンググループ(通称「アドバイジング班」2))のメンバーとして,これまでに具体的な内容の検討と支援スタッフの育成を行ってきた。この「アドバイジング班」でのこれまでの検討事項や活動を踏まえ,本稿ではまず,留学生を対留学生支援システムにおける行動指針と スタッフ・ディベロプメントに関する検討

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