早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●32早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/25-37自然に話したい,話し相手がほしい,話す機会がほしい表6 日本語学習の相談ベスト3相談項目会話練習作文・レポート添削文法や語彙の間違いのチェック,レポートの書き方授業で出された課題テキストの質問,課題インタビューの協力依頼相談内容チュートリアルの趣旨をうまく伝えきれていないもどかしさを教員に訴えていたこともあった。作文やレポートの添削という依頼も多かった。授業で課されたとみられる作文の文法的な誤りを指摘してほしいとか,自分の言いたいことがきちんと書かれているかどうかを見てほしいとかいった依頼である。春学期でも秋学期でもこの書いたものの添削に関しては,共通して「研究計画書」の類の添削を禁じることにしていた。入試に関わるこの手の添削では,公平性を求められる性質を持つので全面的に禁止することにした。履修している日本語の授業で出された課題の質問は,日本語を学習している留学生にとって喫緊の相談であったり,相談として持ち込みやすいものであったと思われる。中には,「明日の日本語クラスでテストがあるから,授業のプリントを復習したい。」とか「明日の授業でスピーチを行うので,その練習をしたい。」といった駆け込みの相談も見られた。こうした相談も日本語チュートリアルが理念的に掲げている留学生の自律的な日本語学習の促進であるとか継続的な学習計画を支援するという趣旨からほど遠い相談になっていると言え,はたしてこうした相談への対応が的確に行われたかどうかについては十分に振り返っておく必要があるだろう。今回の支援スタッフの対応では,ただ来訪者のリクエストを聞いて満足感を得てもらう対応ではなく,留学生が本当に言いたいことを内省させたり,課題から展開される発展的な課題を出してみたりと様々な対応上の工夫が見られたこともあり,評価してよい。こうしたことの背景には,支援スタッフを支える教員スタッフのアドバイスやシステマティックなものではないにしても支援スタッフ間の協力体制の芽生えなどがうまく働いた部分があったように思われる。2.2 日本語チュートリアルの実施記録より:支援スタッフの対応の仕方や振り返りなど次に2.1と同じ資料である日本語チュートリアルの実施記録から,日本語チュートリアルの中心的な支援スタッフであった日本語教育研究科の大学院生の対応ぶりがわかる記事を抽出して,支援スタッフが具体的に相談内容にどのように接したのかをいくばかりか述べてみたい。具体的な対応の分析に入る前に確認しておかなければならないことは,日本語チュートリアルで支援スタッフに期待された役割のことである。資料1.「『留学生支援システム』および『日本語チュートリアル』の理念と支援スタッフの役割」の「Ⅳ.支援スタッフの役割 日本語チュートリアルの第一運営者 6.具体的な支援スタッフの役割」によると,支援スタッフの役割として大きく次の3つの役割があった。日本語チュートリアルにおいては開始前(春学期には初週の各曜日に実施)に支援スタッフへのガイダンスを行い,この役割意識をもってもらうように教員スタッフが指導した。支援スタッフが自らの仕事を進める中でこの3つの役割を意識して進めたことになる。実際,実施記録を分析すると,それが反映された記述が見られた。この3つの役割の中では,ナビゲーターとしての仕事が比較的遂行しやすいようであった。この日本語チュートリアルではナビゲーター先となる大学内の関

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