早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号
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●28の5月23日(月)から各曜日の初回日の実施直前に支援スタッフを集めて,日本語チュートリア1)日本語チュートリアル実施の基本的な記録:いつ・どこ・だれが・なにをしたか3)日本語チュートリアル実施に関する研究資料:来訪者分析やスタッフの振り返りに利用1.4 実施の方法ここでは,日本語チュートリアルの具体的な実施方法について述べておきたい。1.3で述べたような人選を行って,日本語チュートリアルを実施する各曜日に5名から6名のスタッフを配置してシフト表を作成し,その中から毎日3名が実際の支援スタッフとして業務についた。また,初回ルに関わる教職員とともにガイダンスを行った。そこでは,あらためて日本語チュートリアルの理念やアドバイジング上の留意点,学習計画の奨励などを伝達した。日本語チュートリアルの理念や運営の方法は研究スタッフの方も手探りの状態であったため,こうしたガイダンスの内容が完全ではなかった面もあったかもしれないが,支援スタッフの育成やチーム・ワークの充実も視野に入れるとすれば,こうしたきめの細かい指示も必要不可欠なものであるように思われる。毎回の日本語チュートリアルのサポートでは,第一に教室の環境作りがあった。通常使用している大学の教室を1部屋借りて行うので,教室には椅子や机はもちろんのこと,AV機器や黒板などは備え付けのものとして揃っていた。しかし,実際のサポートを行う上で必要と思われる教材や文房具,資料等も常時そろえておく必要があり,それらは日本語チュートリアル専用の小型ワゴンを用意して,そこにボックスを置き整理した。また,サポートを行う上で必要と思われたPCやプリンターなどの機材も設置した。日本語チュートリアルで最も時間をかけて教員が打ち合わせを行った実施方法に報告の仕方がある。ここで言う報告とは,毎回の日本語チュートリアルで実施されたサポート内容の報告である。スタッフの誰が来訪者の誰にどういった内容でサポートを行ったのかを報告するものである。この報告の意味はどこにあるかと言えば,次のような目的が考えられるだろう。2)日本語チュートリル実施の共有や継続:スタッフが共有する資料として必要当初春学期の実施に関して言うと,これらのうち3)の理由は初めから予定されていなかった。今期の日本語チュートリアルは,まだサポート体制も充実しておらず,様々なことが保留もしくは手探りの状態であったためこれを研究対象としないことが研究スタッフおよび支援スタッフの間で共有されていたのである。最も問題があったのは,1)と2)に関係する来訪者である留学生の個人情報の管理や扱いに関してであった。記録として報告を書くと,留学生の氏名や学籍番号,また相談内容が記載されることになる。これが記録として保管されると厳重な取り扱いの注意の対象となる。日本語チュートリアルのメンバーは教職員全体で十数名の関係者が存在するので,どこでどのように管理する必要があるか,どこで情報が漏れてしまうかなどといった危惧が常に指摘されていた。また,報告や記録によってサポート体制の充実のためにという目的で個人情報が記載されている報告を共有したり閲覧したりすることが倫理上問題がないのかといった配慮が繰り返し議論された。結果としては,報告については,「日本語チュートリアルの記録」という報告書を作成し,毎回の日本語チュートリアル後に来訪者1人に対して1枚を支援したスタッフが報告するという体制3)となった。これは専用のファイルに綴じられてワゴンにだけ設置された。そうした報告を共有しながら日本語チュートリアルが進んでいったわけであるが,報告の中には支援スタッフが対応に困るという悩みや日本語チュートリアルに関する意見やコメントを記載する早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/25-37

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