●198・ 長く日本語を教えていらっしゃる先生方でも,授業のために教案を書いていることに驚きまし・ 十人の先生がいれば,十通りの考え方,教え方があることを実感しました。複数の先生方が意・ 「2A」と「2B」では,学生への対応が違うことを痛感しました。学生の遅刻や欠席に対して,3.実習科目としての「2A」「2B」早稲田日本語教育実践研究 刊行記念号/2012/197-199日研の実習科目としての「2A」「2B」では,参与観察,および,実習生による教壇実習の二つを,主たる活動としている。参与観察は,筆者や他の実習生が行う授業だけでなく,「2A」「2B」でチームを組んだセンター教員のご好意により,他の先生方の授業もその対象とした。他の先生方の授業に参与観察にうかがう際には,実習生はあらかじめ自分なりの教案を作成する。参与観察時には,目の前で展開している授業の記録をとり,自分が立てた教案の問題点,特徴を考えるようにした。(実習生が作成した教案や授業記録などは,参与観察をさせていただいた先生方に,すべて,後日お届けした。)それに加えて,実習生は,学期中に数回行われる「2A」「2B」合同の教師ミーティングにもオブザーバーとして参加した。ミーティング後には,感想や疑問点,また,自分だったらどのような意見を述べるかなどをまとめて提出した。実習生から出された感想は,たとえば次のようなものである(匿名性を保つために,一部修正を加えた)。た。私たちならともかく,ベテランの先生が教案を書いているとは思っていなかったからです。見を交換し,お互いを認め合うことで,チームの力が何倍にもふくらむことがわかりました。どのように対応するかは,優しい先生か厳しい先生かの違いではないのですね。学生にとって,日本語クラスがどういう位置づけにあるかをわかっている必要があると感じました。・ コーディネーターの役割は,チームの先生を縛ることではなく,「どうしても全員で統一しなければいけない最小限の枠組み」を提示し,その中で,1人ひとりが個性を出して自由にできる環境を作ることだということがわかりました。実習生の感想は,教案作成や教え方といった個々の授業に関わるものから,チームティーチングのあり方,コーディネーターの役割など多岐にわたる。なぜ,実習生を教師ミーティングにオブザーバーとして参加させたのか。その目的の一つは,「実践(5)」における実習を,単なるスキルトレーニングで終わらせないためである。また,実習生たちは,互いの感想を共有することにより,同じミーティングに出席していながら,それぞれが注目する箇所が異なっていることを知る。これは,自らが暗黙のうちに是としている言語観,教育観に,改めて気づくきっかけにもなる。日本語教育における教員養成において,担当者や他の実習生の授業を参与観察したり,実習生が教壇実習を行ったりするのは,ごくごくあたりまえの活動であろう。しかし,チームを組んでいる他の先生方の授業の参与観察や,教師ミーティングの出席といった活動は,実現したくても実現できない現場がほとんどではないだろうか。筆者が担当する授業においてそれが可能であったのは,日本語授業が教員養成と一体化した日本語教育システムとして機能するべく,センターと日研の連携がはかられていたためである。
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